最終回『Never Forget』

牧野:茨城音楽フェスティバル会場内 午前中


 美咲ちゃんの結婚式から三ヵ月後、

 私達ラーバスサスペンションズはついにメジャーデビュー後の初ライブを行う事になりました。

「とうとうこの日が来たね。こんな大舞台で結果を出せるなんて、嬉しいよ」

 上杉君が言います。

「まだだろ、俺達の冒険はこれからだぜ、な? 玉藻」

「うん、そうだね、豚さん」

「おタマ様、今日はとことん楽しみましょうねっ」

「うん、行くぞ、ラーバスサスペンションズ! ファイトッ」


 私達四人は手を合わせて激を飛ばしあいました。



牧野:茨城音楽フェスティバル会場 大ステージ 午前中


 そして会場に姿を現すと、とてつもない数の観客が私達を出迎えてくれました。

 SNSの効果って、凄い。


「ついに念願の生玉藻だ~~~」

「きゃあ~~~上杉君!」

「とくっぺさ~~~ん、応援してますよ~~~~」


「ち・・・俺への歓声は無しかよ」

「拗ねないの、豚さん」


 そして私達の演奏が始まり、会場は熱気に包まれました。

 ずっとこの日を待っていました。

 聡子お姉ちゃん達も私のことをVIP席から見守ってくれています。


蘭:茨城音楽フェスティバル会場 大ステージ 午前中


 蘭です。姉と一緒にフェスにやって来て、牧野さんのライブを観ています。


「・・・カッコいい・・・」

「あれれ? 蘭、タマちゃん見て、そういうこと言うようになったんだ~~」

「もう・・・お姉ちゃん、嫌いっ」


 お姉ちゃんが私を冷やかしてきます。

 私は堪らず赤面してしまいました。


 と、長畑さんがVIP席から立ち上がって、最前列に向かい始めました。


長畑:茨城音楽フェスティバル会場 大ステージ 午前中


 長畑だ。

 俺は今、世界で一番カッコいい女性の演奏を見ている。

 牧野玉藻。

 彼女に出会ってから、沢山の事があった。口論したり、ビンタされたりもしたけれど、今となってはどれも素晴らしい思い出だ。

 牧野さんの雄姿をもっと近くで見つめたい。

 その一心で、俺は人ごみを掻き分けて最前列にやってきた。

 牧野さんが、俺の存在に気が付いたのか、見たこともないような満面の笑顔を見せてくれた。

 牧野さん・・・。


 俺は、キミが、好きだ・・・。



牧野:茨城音楽フェスティバル会場 大ステージ 午前中


 牧野です。

 長畑さんが最前列にやってきて、私に声援を送ってくれています。

 彼に会ってからもうすぐ一年。

 色んな事がありました。

 夢に敗れそうになったり、ライバルに負けたり、スランプになったり、中々お姉ちゃんに会えなかったり。

 だけど沢山の人とめぐり会えて、私は変わり、大きく成長しました。


 「人との出会いが財産になる」


 美咲ちゃんがあの時くれた言葉が、今、再び脳裏を過ります。

 きっと人生とは、人との出会いが全てなのでしょう。

 自分が出会えた人達で、人間は幾らでも変わっていけるんです。

 東京に出てきた私は、人との出会いに恵まれました。

 ・・・きっと小弦は、人との出会いに恵まれなかったんです。

 そして私はこれからも、沢山の出会いと別れを経験していくのでしょう。


 私はツインバレルのギター&ベースを放り捨てて、長畑さん目掛け、観客席に飛び込みました。

 長畑さんは、そんな私のことを、力強く受け止めてくれました。


 恋とは、青春とは、人生とは、きっと、人との出会いが、全てなんです。


「おい、あの二人、抱き合ったぞーーーーー」

「うわーーーーほっぺにキスしたーーーーー」

「どうなってるんだーーーーー」

「大ニュースだーーーーー」




 ・・・・。


 こうして、私の物語は終わりますが、

 皆さん、どうか私を、私達の事を、忘れないで下さいね。


 牧野玉藻から、皆さんへ、最後のお願いです。




 気になる牧野さん最終章-Never Forget- 

 これは、誰かが忘れない限り、永遠に続く物語。。。


 


 完


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る