最終章part29『愛の歌』
牧野:レインバス社内 GAM部室 夕刻
牧野です。
今、私は社宅を出て、森羅さん、じゃなかった。お姉ちゃんと一緒に暮らしています。
お姉ちゃんはアメリカ行きを取りやめました。
毎日がとても幸せです。
本当に、心から充実しています。
美咲ちゃんの結婚式も迫ってきた、そんなある日、狩川さんに呼び出され、私はGAMの部室にやってきました。
「狩川さん、頼みって、何ですか?」
「あのね、実は色々考えたんだけどさ。玉藻っち、美咲ちの結婚式のために、ウエディングソングを作ってくれないかな?」
「うっウエディングソング?? 私がですかっ」
「それがあたしが美咲ちに出来る最大の贈り物なんだよ。お願い、玉藻っち。この狩川亜美奈、一生に一度のお願いだよっ」
狩川さんが私に何度も頭を下げてきます。
とはいっても、結婚式までもう二週間も無いし、時間がなさ過ぎる。
そうだ、お姉ちゃんだ。お姉ちゃんと共作しよう。
「わかりました。美咲ちゃんのためだから、私、作ってみます」
「ありがとう、玉藻っち。」
牧野:牧野と森羅の愛の巣内 リビング 夜
牧野です。
さっそくお姉ちゃんにウエディングソングを一緒に作ろうと相談しました。
「ウェディングソング?? どっひゃ~~~そんな大層な物、恐れ多いよ~~~」
「でも、頼まれたんだよ~。何とかしようよ。二人で力を合わせれば、きっと良い歌が作れるよ!」
「う~~ん、聡子、困っちゃ~~う」
「そんなこと言わないで、お姉ちゃん。一緒に作ろう! ね?」
「う~ん、しょうがないな~。うふふ、いいよ。一緒にやろう」
こうして、私と森羅さんは歌を初めて共同製作しました。
「いい、玉藻。歌詞ってのはテーマが大事だからね。美咲ちゃんと今井さんの関係を考えながら書くんだよ~」
「うん、わかった。曲はミディアムバラードって感じでいいかな?」
「いいんじゃない。それで行こう」
私はお姉ちゃんに美咲ちゃんと今井さんとの関係を知ってる範囲で細かく伝えました。
それを元に、お姉ちゃんがさっそく詞を書き始めました。
お姉ちゃんは天才です。
本当に良い歌詞を考えつきます。
ラーバスサスペンションズの楽曲の作詞は、お姉ちゃんにお願いしようかな?
私はサビの部分だけを一生懸命に考えました。
そんなとき、お姉ちゃんのスマホが鳴りました。
相手は東矢さんのようです。
そうです、二人はいい感じになってるみたいなんです。
お姉ちゃんは東矢さんと楽しそうに喋っています。
聡子お姉ちゃんの恋、応援しますっ!
そして、数日後、ついに曲が完成しました。
東矢:海の見える公園 夜
東矢だ。
森羅さんと二人で夜の海を見てる。
あの日、森羅さんが俺に曲を歌ってくれた場所だ。
「ヒガシ君、色々、ありがとね。本当に助かったよ~」
「当然の事をしたまでです」
俺と森羅さんは見つめあった。
彼女の澄んだ綺麗な瞳が、月に照らされて輝きを増している。
今日こそ、俺の想いを伝えるときだ。
「森羅さん・・・」
「はーーい、ストップーーーッ!」
「ええ」
「そういう展開は、あの可愛い合法ロリちゃんと致しなよ~」
「あいつは・・・ただの、友達ですっ」
「だってキスしてたじゃ~ん。ウチはバッチリ見たんだよ~~??」
「あれは・・・仕事上、やむ終えずですよ。俺は、本気で森羅さんの事、愛しています。俺と、その、結婚を前提に、・・・付き合って、下さいっ」
森羅さんは少し考え込んだ後、両手で罰印を作った。
「う~~ん・・・駄目ーーーッ」
「しっ森羅さん・・・」
「罰としてチャージマン研全話視聴の刑を命じるっ」
「それだけはご勘弁を~~~」
森羅さんは狼狽する俺を見て笑った。それから少し真剣な表情になってこう続けた。
「・・・正直ね、ウチ、まだ彼のこと、想ってるんよ。」
「及川さんですか・・・。」
「・・・うん。忘れられないんだ。彼の慈愛も、温もりも、勇気も、全部ね。だから今は、恋、出来ない気分なんだ」
「・・・」
「でもヒガシ君とは仲良くしたいから・・・だから、今しばらくは、友達のままでいようよ」
「森羅さん・・・俺は、諦めません。いつか、及川さんごと飲み込んで、あなたのこと、物にしてみせますっ」
「おお、強気だね~いいよいいよ~そういう人、ウチは好きだよっ」
そう言って、森羅さんは手すりに寄りかかり、俺に満面の笑みを見せてくれた。
それは今まで見たこともないような素敵な笑顔だった。
俺と森羅さんとの恋は、まだ始まったばかりなんだ。これから始まるんだ。
諦めない。目移りしない。
男、東矢宗継。
俺は、彼女を、光定聡子さんを、いつの日か、必ず嫁にしてみせるぜっ。
まずは牧野さんから切り崩して・・・。
「おいっ筒抜けだぞ~」
森羅さんが俺の頭部にチョップしてきた。
「いててっ」
「うふふ、まだまだケツが青いね」
「・・・」
くっ・・・こいつは、世界で一番、難儀な恋になりそうだな。。。
日下:船上クルーズ結婚式 午後
日下よ。
いよいよ今日は指野さんと今井さんの結婚式。一部の親族と私達職場やGAMの仲間達、極少数の親友の約100名で、
結婚式は大きな船上の上で行われたわ。
天候にも恵まれて、結婚式は滞りなく終わったわ。
そして披露宴になった。
「ねえ、日下さん。あの人、もしかして、天上寺初音さんかな?」
あたしの隣に座っている牧野さんが、遠くの席に座っている同じ事務所の大先輩、天上寺初音を指差しました。
「そうよ、あの大女優の天上寺初音よ。」
「信じられない。一体美咲ちゃんとどういう関係なの?」
「あんたね。。。同じ事務所の大先輩でしょうが? そんなことも知らなかったの?」
「私は音楽部門だから、女優さん達とは殆ど面識なくって。ちょっと挨拶してこようかな」
「馬鹿言ってんじゃないわよ、そろそろ歌うんでしょ? 聡子お姉さんが準備してるわよ。早く行ってあげなさいっ」
「そうだ、歌うんだった。よ~し、頑張るぞ~~」
牧野さんは席を立って歩いていった。
全くもう、お子ちゃまなのか、大人なのか解らないわね。。。
「ねえねえルリ、写真撮るよ~こっち向いて~~」
そう言って、真希があたしと網浜、蘭、長畑君、東矢君、アホネン、狩川さん、
玉藻の兄貴の魚雅君達の写真を次々に撮っていった。
写真担当に任命されて、大張り切りみたい。まったく、はしゃいじゃって、本当にもう。。
牧野:船上クルーズ、舞台前 午後
牧野です。
私がツインバレルの楽器を、お姉ちゃんがギターを持って舞台に立ちました。
司会者が、指野家の親族、プロのミュージシャンの二人から素敵なオリジナルウェディングソングのプレゼントです。と紹介をしてきました。
「さあ、玉藻、一緒に歌おう。」
「うん、ファイト!」
「どんな歌なのかしら? 楽しみね、大志」
「ああ、楽しみだな」
美咲ちゃんと今井さんが何やら話をしています。
そしてしばしの静寂の後、お姉ちゃんがギターのイントロを弾き始めました。
その演奏に合わせてリズムを取り、私が出だしを歌い始めました。
『愛の歌』 作詞:光定聡子・牧野玉藻 作曲:牧野玉藻 歌:牧野玉藻・光定聡子
もうすぐ二人は繋がるね 悲しいこともあったけど
一緒に同じ夢を見て 一緒に幸せ探したね
長い試練もあったけど お互い乗り越えられたよね
どんなに辛いときでも あなたはいつでも笑顔だったね
一番大切なことは あなたを信じてたってこと
一番大事なことは あたしを信じてくれていたこと
大きな声で歌うよ 未来へ繋がる愛の歌
あなたが信じた未来 失くした夢 取り戻せたら素敵だね
小さな愛を育てよう 希望に繋がる愛の愛
あなたと共に 歩いていこう これからはずっと繋がりだね
私達が歌い終わると、来場者達から盛大な握手と声援が飛びました。
曲を聴いた美咲ちゃんは喜びの涙を流していました。そんな彼女の肩を、今井さんは優しく抱きました。
美咲ちゃん。本当に、色々助けてくれてありがとう。お幸せに。
私達からの贈り物、喜んでくれると、嬉しいな。。。。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます