第37話



 その日、姫華がいたクラスでは彼女が転校したという知らせが先生の口から教えられた。

 突然のことに半数近くが驚いていたのだが、尊以外にもまるでそうなるのを知っていたかのように、平然と受け入れる人がいた。



 それは昨日、美朝を校舎裏に連れて行った女子達だ。

 彼女達は美朝が去り際に言い残した言葉を聞いていなかったと思われたが、実はその内の一人の耳に入っていたのだ。


 彼女はもちろん他の人にも伝えていて、その時は一体どういうことだろうとみんなが分かっていなかった。


 しかし姫華の突然の転校を知り、全ての辻褄が合う。

 彼女達は、それをやったのが美朝だと結論を出した。

 姫華の存在を邪魔に思って、いつものように不思議な力で消したのだと。



 そういうわけで、また美朝の噂は広まった。

 例の転校生は、彼女に消されたのだと。

 そしてそれを聞いた人達は、彼女ならやりかねないと完全に納得した。


 こうして、今回はほとんど関与をしていないはずの美朝に、全ての責任が押し付けられる結果となった。

 そのせいで、また遠巻きにされる距離は広がったが、彼女にはどうでもいいことだった。



 実際は犯人である尊の方はどうかというと、こちらは姫華が転校してくる前に戻っただけだ。

 彼に対して少し距離を開けて、邪魔にならない程度に好意を寄せる。

 そして近づこうとするものが出そうになったら、制裁を加える。


 このように、すぐに学校に平穏は戻った。




 そしてあんなにも姫華のことを溺愛し、彼女のために色々な支援を惜しまなかった両親はどうなったかというと。


 彼等は一人娘がいなくなったのにも関わらず、何もしなかった。


 騒いだり警察に連絡したり、行動を起こさずにいつの間にか街からいなくなっていた。


 いなくなる前に、二人に会った人はこう話す。


 彼等はまるで人が変わっていて、何かに怯えていた。

 たった数日の間に、まるで老人になってしまったぐらい歳をとっていたと。


 だから人ひとりが消えたのに、全く事件になることなく終わった。

 そしてそれを不思議だと思わないこの街は、いつも通りの日常を送るだけ。



 誰もが黒闇家に引っ張られて、少しおかしくなっているのかもしれない。

 しかし、それに気づく人は誰もいなかった。


 こうして、街は今日も変わらぬ一日を過ごしていく。




 黒闇家に関わってはいけない。


 しかしその噂をする人は、おかしいのは美朝だけだと思っている。

 確かに彼女もおかしいかもしれないが、それだけではない。


 帝も美夜も尊も、全員が全員どこかしら人と違っていた。


 平和に過ごしたいならば彼等に深く関わらず、地雷を踏んでもいけない。

 このことを守っていれば、大丈夫だ。


 もしもこの街に来たら、それだけは忘れずに行動して欲しい。



 一度目をつけられたが最後、無事にその街から出られることは絶対に無いのだから。


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黒闇家 瀬川 @segawa08

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