あなたは、この話を信じますか?

みやび

あなたは信じる?

高校生の頃、私の周りでは「まじない」や「都市伝説」が流行はやっていた。


ある日、一人の友人が私に声を掛けてきた。


「ねぇねぇ、知ってる?」


「は?何を?」


突然の質問に私は疑問符を頭に浮かべる。


私はこの友人が苦手だった。

自由奔放じゆうほんぽうで自己中心的……だけど、クラスではムードメーカーとして皆から親しまれている。


この感情は羨ましいのか……嫉妬しているのか……

自分では分からないが、なんとなく私はこの友人が苦手だった。


今もそう。

私が本を読んでいる事はお構い無く声を掛けてきたのだ。


少しは空気を読んで貰いたい。


そんな私の思いは伝わる筈もなく、友人は話を続けた。


「え、知らないの?「ムラサキカガミ」の話。」


「……知らない。」


主語も質問内容も言っていないのに、知ってるとも知らないとも答えられないと思う。


その友人は私の答えが嬉しいのか、とびっきりの笑顔で言葉を紡ぐ。


「「ムラサキカガミ」はね、二十歳までにこの言葉を覚えてしまうと不幸になるんだってー!」


「……何でそれを、私に?」


何か私に恨みでもあるのだろうか。

そんな不幸の手紙みたいな話は眉唾物まゆつばものだろう。


「え?だってさー、あんたって、こういう話信じないでしょ?」


「そうだね。信じてないかな。」


「だから、信じてない人に話すとどういう反応するのかなって!」


「……そう。」


「あーぁ、つまんないの!もっと反応してくれても良いのに!」


信じていない話や興味の無い話をされて、どう反応しろと言うのか。


「ま、いーや。他の人に話そーっと!」


そう言うと、別のグループに行き、その話をしている様だった。

そのグループからは「キャー!」「うそー!?」「怖いっ!」等と大きなリアクションがあり、その友人も満足そうにしていた。


私はその事に興味は無いので、周りが騒がしくなったな、と感じながら読書に戻る。




ピピピピピピピッ


ピピ……カチッ


懐かしい夢を見た。


もうすぐ二十歳はたちの誕生日が近いからだろうか。


そう思いながら私は、目覚ましの音と窓から入る暖かな日差しで目を覚まし、ベッドから起き上がる。


顔を洗おうと洗面台に向かい、手で水をすくおうと手を出すと、自分の小指に何かついていた。


水を止め、自分の小指を顔の前に持っていきを見る。


小指についている「赤い糸」。


そういえば、「運命の赤い糸」の話もその友人から聞いていた様に思う。


何とか取れないか色々と試すが取れる気配が全く無い。


これ以上、この糸に時間を浪費してしまうと、大学に遅れてしまう。

そんなに邪魔でも無いので私は「赤い糸」を気にしない事にした。


準備を整え、大学へと向かう。


信号待ちしていると、糸のついた小指が くっ と引っ張られた。


なんだろう?と思い 糸を見ると、先程まで垂れていた筈の糸が ピンッと張っていた。


他の人には糸が見えない様子。

そして、その糸に触れられない様子だった。


私はその糸を追い、横断歩道の向こうを見ると男の人が私に手を振っていた。


大学生になり、付き合い始めた私の彼氏。

その小指には私と繋がる「赤い糸」がついていた。


私も彼氏に笑顔で手を振り返す。


その瞬間───


ガシャンッ


車にひかれた。

彼氏がよろめき、横断歩道に出てしまった直後の事だった。


周りの人達は、ざわめき、悲鳴を上げる人、彼氏に呼び掛ける人、救急車を呼ぼうとする人で混乱している。


私はその様子をただ呆然と見ている事しか出来なかった。


頭の回転が鈍くなり、今、目の前で何が起こったのか理解が出来なかった。


その時に頭にあの友人の声が聞こえた気がした。


────「ムラサキカガミ」はね、二十歳までにこの言葉を覚えてしまうと不幸になるんだってー!


そして、もう一つ。

騒がしいグループで「運命の赤い糸」の話をしていた時に漏れ聞こえた言葉。


───運命の赤い糸はね、将来の結婚相手を傷つけてしまうって話もあるんだって!


私はそんな話は今まで信じていなかった。


だけど、目の前で……

同時に二つの都市伝説を体験してしまったら信じるしかない。


あの頃の私は一体どうすれば良かったのだろう。


私はその場で座り込み、血に染まっていく彼氏の姿をにじむ視界で────ただ眺める事しか出来なかった。









──────

二十歳未満の方へ。


都市伝説として有名な「ムラサキカガミ」。

だけど、回避する方法があります。

それは、「紫の水晶」の言葉を覚えておく事だそうです。

皆様に不幸が訪れない事を祈ります。


















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あなたは、この話を信じますか? みやび @-miyabi-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ