おまけ

特別インタビュー

7月某日

私こと岡紅葉は、月見里真子さんにお話する機会を設けてもらい、広瀬先輩とのことについてインタビューをした。




岡紅葉(以下 岡):では早速なのですけども

月見里真子さん(以下 真):あいあい。

岡:インタビュアーとして岡が務めさせていただきます。

真:あい。

岡:それではよろしくお願いします。

真:うっす。

岡:ちなみになんですけど。たった今録音してるこのインタビューで頂いたお言葉はそのまま記載しようかなって考えてます。

真:先に言いなさいそれ。


 この時点で、私の真子さん像は(広瀬先輩から聞いていたから予想していたとは言え)早くも崩れ去っていた。

 恋愛小説のヒロインと言えば、お淑やかだったり明朗快活だったり幅広いが、女の子らしいというのが共通点だ。

 広瀬先輩からは「そういうところはあるにはあるが、多分感じないぞ」と事前に言われてはいたけれども、どうしてもヒロイン像は拭い去れなかったのだ。

 というのもあるので、まずは真子さんに自己紹介してもらうことにした。


岡:真子さんがどのような人なのか岡にはわかりませんので、広瀬先輩からではなく、真子さん本人からどのような方なのかお伺いさせていただきます。

真:どうぞ。

岡:まずはこんな質問からがいいかなって思っているのですが、小塚弦楽合奏団(以下 KS)に入られたきっかけを聞いてもいいですか?

真:母に紹介されて入りました。

岡:お母様はKSをご存知でしたんですね。入られたときの第一印象ってどうでしょう?

真:みんな難しい曲弾けててすごい私全然弾けないって感じでしたね

岡:広瀬先輩からの話だと12月は追い込みの前らしいですね。初見で弾けたらそれってすごいことじゃないんですか?

真:そうかもしれませんね。

岡:真子さんは今も楽器を弾かれているんですか?

真:たまーに弾きますよ。広瀬くんは今でも弾いてます?

岡:先輩は今は弾いてないらしいです。腕が鈍ってるーってよく言ってますよ。


 真子さんと私の共通の知り合いが広瀬先輩しかいないからというのもあるが、真子さんの話にはよく先輩の話が出ていた。


岡:音楽を続けられるのってすごいなーって思います。続けられる理由ってなんでしょうか?

真:発表や弾く機会をいただいていることですね。仕事関係だったり、アマチュア演奏会の助っ人だったり。


 と、ここで何かを思ったのか真子さんがストップを掛けた。


真:はいストップ! カットカットー!!

岡:どうかしましたか?

真:日本語変だったからセリフ入れ替えといて!

岡:あはは、わかりました笑(残しておくつもりの笑みを浮かべながら)


 この時点で私は真子さんが揶揄からかわれキャラなのだなと暗黒微笑を浮かべながら心のメモに記入するのだった。


岡:では次の質問をします。今回の話の中で特に印象深いエピソードってありましたか?


 掲載したエピソードは全て広瀬先輩目線の話である。これを真子さん本人にも読んでもらい(当然、先輩はこのことに大反対した)、その感想を真子さんに尋ねたのだ。


真:フラれても彼氏がいるって知ってても、私のことが好きだったってとこはびっくりしましたね。そんなに好きだったのかと。

岡:一途だったんでしょうねぇ。

真:いつまで一途だったんだろうねぇ。


 面白そうに笑っている真子さんが何をどう思って気になっていたのか、私にはわからない。本人と先輩にしかきっとわからないだろう意味合いがそこにはあった。


岡:それはさすがに私も聞いてませんよ笑 ぜひ本人に聞いてください。

真:いつまで一途だったんですか?!!!(遠くに座っている広瀬先輩に向かって大きな声を出す真子さん)


※ここで先輩が後にしろとジェスチャーする。


岡:告白の話は広瀬先輩もあまり話したがらなかったんですよね。真子さんから高2の夏合宿の話、なにかお聞かせください!

真:本編でも言ってたんだけど、今このタイミングで告白かよって呆れたね。

岡:やっぱりクリスマス会や定期演奏会がよかったんですか?

真:高2の時点ではもう広瀬くんのこと恋愛感情皆無だったからどのタイミングでもダメだったけど。高2の時点で先輩と付き合ってたからね。

岡:広瀬先輩の話では高1(高2の4月)の定期演奏会が最後だと思っているらしいですけどね。そのタイミングで告白できても、話を聞く限り……どうなのでしょうね。

真:どうだったんだろうね。仮に付き合ったとしても別れて絶縁してたと思うよ。

岡:これは厳しい考えですね笑 理由を聞いてもいいですか?

真:むしろ私と広瀬くん長く続くと思う?

岡:私にはその判断はつかないですね……。先輩が真子さんとは毎週仲良く話していたということはよくわかるんですけど、真子さんとしては広瀬先輩にもっと別のものを求めていたということですか?

真:うーん、なんて言ったらいいのかな。よくメールで喧嘩してたんだよね。で、その喧嘩メールで稀に本気で泣きそうになるほど嫌になってたから、恋人だったら耐えきれなくて別れて私が絶縁するなと。

岡:ほうほう、これは先輩がひどいですねぇ笑 もしよかったらなんですけど、例えばどんなのでしたか?

真:えーもう覚えてないよ笑

岡:それは残念ですね。ちなみに先輩にも後でそのこと言っといた方がいいんじゃないですかね笑


 このインタビューの後、被疑者である先輩にも同じことを尋ねたが、本人は「確かにそういうこともあったかもなぁ。あれは不素直な俺が悪い」とだけ言って詳細は教えてくれなかった。


岡:では次の質問をします。今回の話以外でも真子さんと先輩のエピソードがあると思うんですけど、真子さんとしては先輩との出来事で1番記憶に残ってることは何でしょうか?

真:どの話だったか忘れたけど、頭をグイってされた瞬間が一番記憶に残ってます。ものすごくドキドキしたので

岡:「一緒に帰ろう」の話ですかね?

真:そうそう。


 真子さんと先輩が一緒に帰っているときに、補導されている男性を見ていた真子さんを先輩が頬を掴んでグイッと向きを変えさせたのだ。

 本人にその気はなくても真子さん目線では顔グイというやつでしかなかっただろう。先輩にはもう少しそういうことにも意識をしろよと思う。


 そして何よりそのエピソード、つい最近思い出したのだと先輩はほざくのだ。

 曰く、このインタビューの話が決まった際に真子さんと連絡を取ったのだが、そのときにこんなこともあったよねぇみたいな話をしたそうで、そのときに顔グイがあったと真子さんに言われて、そんなこともあったなと思い出したのだとか。

 本人としてはその後のエスカレーター事件の方が印象深かったのだと言うのだから、先輩の人としての価値が疑われるというものだ。


岡:先輩と一緒に帰る機会って多かったんですか?

真:たまに帰ってたよ。

岡:先輩の話を聞いて思ったことがあるんですよ。どうして真子さん達はどこかに遊びに行ったりしなかったのかなぁって。その点、真子さんはどう思われているんですか?

真:その発想がなかったからだね!

岡:そうなんですか!?

真:広瀬くんもそうだったんじゃない?

岡:先輩もそうでしたね。毎週会って話して満足だったんですかね?

真:KSに行けば会える人っていう認識だったんだよ、お互い。

岡:小塚市には城址公園もあるそうですし、お花見とかすればよかったのにって先輩の話を聞いてて思いました。

真:でも全く思いつかなかったねー。

岡:大人になってからはカレーを一緒に食べに行かれたとか。

真:行ったよ。

岡:私、この話聞いて「今更かよ!」ってツッコミましたよ笑

真:会って話すなら美味しいものを食べながらがいいじゃない。

岡:中学高校時代になんでそういうことをしないの!? ってなりました笑

真:KS以外で会う発想がなかったから仕方がないね笑 広瀬くんが誘ってくれればよかったのに笑

岡:デートくらい誘えって先輩に言ってくださいね笑


 デートに誘う発想も必要ないくらい身近だったのか、それともデートは恋人同士で行くものであって今は誘うべきでないと考えたのか。

 私にはわからなかったが、もったいないなぁと聞いてて思った。


岡:次の質問なんですが、真子さんの同期やその前後では女性が多いとお伺いしました。先輩のあの性格だったら真子さんに限らずいろんな女性と仲良くしてたんじゃないですか?

真:してたね。

岡:お話にもありましたが、先輩が思ってる以上に嫉妬したり焦ったりしたんじゃないかなぁって思うんですけど、どうだったのでしょうか?

真:嫉妬はしてたけど、焦ったことはないな。

岡:そうだったんですか? 取られちゃうかも!! ってなったりするもんじゃないんですね〜。

真:それよりも広瀬くんが他の女子とも仲良くなった辺りで、私にちょっと冷たくていじわるだと感じてしまう気まずい時期があったよ。

岡:ほうほう

真:そういえば取られちゃうかもって焦ったこともあったかも。でもそれ以上に気まずい期の印象が強い。

岡:焦ったことあった「かも」なんですね笑

真:過去の男だからそんな詳しく覚えてないよ。

岡:表現が辛辣ですね笑笑


 ここまで聞いてみると、私の中の真子さんのイメージはまた変わっていて、広瀬先輩が思っているより、真子さんって乙女なんじゃないかなぁと感じた。当時、真子さんが先輩にどう接していたかはお話でしかわからないが、これに気付かなかった先輩は一体どんだけ鈍感だったんだと言いたい。


岡:ではそろそろ締めの質問に移っていこうと思います。今は広瀬先輩をどう思われてるんですか?

真:腐れ縁 (友達)。って思ってたけど今は面白い友達の人って感じかな笑

岡:その理由はなんですか?

真:腐れ縁というには重すぎるから、もうちょっとライトに面白い関係だった友達っていう認識でいるよ。

岡:重いんですか? すいません、腐れ縁というのがイメージできなくて……。

真:いや今さっき改めて腐れ縁の意味を調べてそう思っただけだよ。

岡:でも言わんとしてることはわかりますよ。

真へぇ、どう思ったの?

岡:卒団しても何年もちょいちょい会ったり連絡してるあたり、普通の友達だったらあまりないかなぁって思いました。「運命を変える」の話でも、普通だったら再会はなかったんだろうなぁって話でしたし。

真:だから面白い関係の友達だよね笑

岡:ほうほう。真子さんなかなか独特な表現を使われますね。では、先輩の嫌いなところをどうぞ笑

真:素直じゃないところ。照れ隠しで意地悪するところ。天邪鬼。遠回しに遠回しで言うところ。――(以下省略)

岡:やっぱりそこですか笑(多いなぁ苦笑)

真:岡さんもそう思いません?

岡:私も今の先輩を見ててもそう思いますけど、高校生の頃の先輩の話を聞くとヤバいなぁって思いましたね笑

真:私はストレートにアプローチしてくれる人が好きだな笑

岡:今の先輩の話を聞く限りではめちゃくちゃストレートなんですよねぇ。なんですか、ツンデレか? っていっつも思ってます。

真:私にとってツンデレは二次元に限るわ。

岡:このままでは先輩が見返したときにヘコんじゃいそうなので良い点もどうぞ笑笑

真:今は話しやすくて優しいからはやく誰かと結婚しろって思うよ笑

岡:あれで……優しいんですかねぇ。私にはそう思えないんですけど?

真:そうなの?

岡:真子さんには先輩が優しいと言いますけど、どこがそうなんですか??

真:あ、でも未だにいじわるで遠回しで天邪鬼なところはあんまり変わってないな笑

岡:どっちなんですか笑

真:それは私より岡さんがわかると思うよ

岡:私、このあと真子さんにあの人が素直になったと思うか聞くつもりだったんですが……笑

真:特に無いね!

岡:そこはインタビューなんですから答えましょうよ笑

真:素直になってきた時期もあったけど最近戻ってきてる気がする。

岡:そうなんですか?

真:うん


 そんな辛辣な言葉を遠くで聞いていた先輩は頭を抱えていたが、先輩には今後も是非にも改善していって欲しいところだ。


岡:では最後に広瀬先輩に一言ありましたらどうぞ。

真:恋人できたっていう報告してくれないなら結婚報告待ってます。以上!

岡:そんなに報告聞きたいんですね笑 長い時間ありがとうございました!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

先輩、素直にはなれましたか? 岡 紅葉 @momiji_oka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ