この作者は、ファンタジーを己のモノにしている

身体は十七、八の若々しい姿だけれど、その瞳には厭世感が幾重にもこびりついている女性、アイヴィ・ダンテスが物語の主人公。

序盤から怒濤のごとく押し寄せてくる『作者の筆致』に圧倒され、このレビューを書いています。

作者のへるまさんは、もはや完全に、ご自分の筆致を見出していらっしゃると感じました。
そこから描き出される世界観もまた、地に足が付いた、というよりも、『そこに存在してすでに長い時間が経ち、久しぶりに大掃除しようにも埃が固まって取れなくなっているような、積み重なったモノが醸し出すなんとも言えない味』を感じます。

例えがアレですみません。

だって、煙草の描写が秀逸なんですもの。いやあ、あの雰囲気は僕には出せない。
へるまさんは他にも長編作品を複数完結させていらっしゃるので、この作品がエタることもないでしょう。


今回、オーバー30歳主人公コンテストに応募されていて、僕にとってはライバルのお一人なのですが、個人的にはこのような作品こそが日の目を見てほしいと思っています。

確かに文章や雰囲気に癖が強く、人を選ぶ作品なのでしょう。
けど、それこそ個性じゃないかなと思うのです。


個性的な作品、ここにありますよ? 皆さん。