あとがき

 本作ではじめましての方も早河シリーズの常連さんな方も、ここまでお読みいただきありがとうございます。


 【Guilty secret】は本来は早河シリーズ短編集【masquerade】に収録するはずでした。

でも完成した話があまりにもページ数が多く、これは短編じゃねぇぇ~~! となり、単独の作品としてお披露目しました。

短編集【masquerade】はこちらから↓

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890248589


本当の流れは【masquerade】の【story5.Milky way】と【story6.Bay of Love】の間に【(story6)Guilty secret】が入ります。

本作でいきなり美月の結婚話が浮上しているのは【story5.Milky way】の後の話だからです。

短編集もご覧いただいている方はぜひ【Guilty secret】と【masquerade】の作中時間の流れにも注目してみてください✨



▼ふたつの真実


 10年前の未解決殺人事件が本作のテーマでした。

未解決事件を事件側から追及する早河シリーズいつものメンバーと、事件後の空白の1週間から追及する記者の沙耶。

早河達と沙耶が掴んだ殺人事件と空白の1週間のふたつの真実が合わさり、導き出された結論は誰も幸せにはならない悲しい真実でした。


主人公=犯人の物語を書いたのは初めてです。探偵役=犯人と同じくらい、ミステリーのタブーですよね💧

実は事件の真相はプロローグで既に明かされています。プロローグは芽依と赤木が芽依の両親を殺害するシーン。勘のいい方はプロローグ時点で芽依も犯行に関わっていると気付くでしょう。

私はプロローグに物語の『核』となるものを持ってくるのが好きなようです。苦笑


 虐待や育児放棄ネグレクトがテーマの物語を表舞台に出すことは私にとっては挑戦であり、勇気を伴うことでした。

その分野の専門家ではありませんが、親戚に育児放棄をした母親がいたり、虐待を受けて施設に入っている子ども達に縁あって接する機会もあり、Guilty secretはその人達に接した過去の経験をもとにしています。


物語の展開上、芽依の両親の設定にはあえて気性が荒い、子ども嫌いの要素を入れましたが、育児放棄をする人達は特に精神異常でも子ども嫌いでもなく、ただ〈子育てができなかった人〉なのではないかと。

専門家ではないので確かなことは言えませんが、虐待や育児放棄の問題は私も含めて誰もが当事者、加害者、目撃者になる可能性を秘めています。

ニュースの中だけの他人事として聞き流してはいけないことですね。


 芽依の今後……10歳で殺人を犯した芽依を法はどう裁くのか。

現在の芽依は成人していますが事件当時は10歳。少年法がありますし難しいですね。法律に詳しい人~こういう場合はどんな処罰が下るのですか~~~~!!!

もちろん芽依も事情聴取はされるでしょうが、警察はやはり赤木を犯人として追うのでしょう。


 タイトルの【Guilty secretギルティ シークレット】は私の造語ではなく、辞書をひくとちゃんと意味が載っている言葉です。

Guilty secretの意味は『罪深い秘密』。タイトルが物語の内容そのもの、芽依と赤木の罪深い秘密のストーリーでした。



▼覚悟と裁き


 10歳と20歳では恋愛は成立しないけれど(成立する場合もあるかもですがそれは色々と問題が……)10年後の赤木は32歳、芽依は20歳。二人が恋愛関係になっても不思議ではありません。

詩織ちゃんどうするんだ赤木ぃ!とは作者も思います。詩織の存在を芽依は知らないけどおもいっきり二股ね……。


 赤木は詩織のことはちゃんと愛していました。芽依の方が“より”大事だっただけで。

そもそも赤木みたいな恋愛面倒くさがりタイプは好きじゃない女とは付き合いません。詩織を愛してるから付き合っていたんです。

ただこの人不器用だからねぇ。詩織を巻き込みたくないから別れ話もしないで消えたんでしょうね。

芽依と永遠に再会しなければ赤木は詩織と結婚する未来があったかも。


赤木の芽依への愛情は10年前は父性愛のみで、10年後にはそこに男としての愛情が加わりました。そして芽依を守るために、ある人の手を借りて芽依と永遠に離れる覚悟を決めました。


 赤木の逃亡先は、国際条約である〈犯罪人引渡し条約〉を日本と結んでいない国ということにしています。これね、日本は2020年時点で驚きの2か国(アメリカと韓国)としか結んでいないのです。

この条約をフランスは100か国、イギリスは120か国と結んでいるのと比べると日本もっとがんばれよ……ってなりますね。

赤木はアメリカと韓国以外の国に逃亡しました。赤木と二度と出会えないことが私が与えた芽依への『裁き』です。



▼美月と芽依の明暗


 芽依と美月の関係はこれからも続いていきます。でも芽依と美月は真逆で、美月は『どんな理由があっても人を殺してはいけない』を信条にしています。

芽依には真っ直ぐに生きているそんな美月が眩し過ぎるから、二人が大学卒業後も交流を続けてもどこかのタイミングで疎遠になるかもしれませんね。

学生時代は仲良くても卒業してなんとなく疎遠になる、あるある。


 この後の芽依はちょっと荒れる模様です。私の思い描く中ではね💦

親殺しを背負いながら生きていくのは辛いよ。おまけに精神的な支えだった初恋の人もいきなりいなくなったら、そりゃ荒れたくもなるよ……。


真相を知る養父母や美月は芽依の最大の理解者でもあるけど、芽依は彼らを避けてしまうというか、人の善意を信じられない子なので優しくしてくれる人に対して「うっ……(苦手意識)」となってしまうんですよね。

美月も芽依も悪くないです。芽依が人間恐怖症なだけです。

実の親が裏表の激しい仮面人間だったから人間をそのまま信じられないのです。これはもう仕方ないのかなぁと思います。


 でも赤木がいなくなった穴は大きくて、苦手な合コンに行ってみたり、行きずりのナンパ男と一夜限りの関係を結んだり(あの芽依がね……)もしたけど誰も赤木の代わりにはなれなかった。

美月でさえ、【白昼夢】の時に佐藤を失ってASD(急性ストレス障害)を患いましたからね。だけど美月は人の善意や愛情を素直に受け止められる子だったので、ここで美月と芽依の明暗がわかれます。


両親や美月以外で赤木の存在を引きずる芽依を支えてくれる人が現れたらいいんですけどね。

その役目は書店員の小池くんではないです。(キッパリ)小池くん何も知らないしね……


 小池くんがすべてを知ったとしても、隼人(美月の恋人)のようにはできないかな。

芽依が両親を殺した殺人犯だと知れば小池くんは芽依を拒絶すると思います。それが一般的な感覚を持つ普通の人の反応ですよね。

まぁ美月を支え続けられる隼人が何者なんだよって話なんですけど。隼人は一般的な感覚を持つ普通の人じゃないからさ……。


 小池くんは平和に生きてきた人です。

しかし彼のその穏やかさが芽依の痛みを包み込めるかと言うとそうでもないんですよ。

殺したくなるほど人を憎むことを知らない、憎しみや絶望を知らない。親は子どもを愛するもの、子どもは親に愛されて当然、そう思ってる人っていますよね。


小池くんって芽依が最も苦手なタイプなんですよ。いい人なんだけどね、で小池くんは終わるタイプです。可哀想に💧

いつか、芽依の心の傷や過去に寄り添える人が現れると私は信じたいです。自分が創作している世界のことなのに、こればっかりは作者の私にもどうなるかわからなくて不思議。



▼時代の変化とシークレットゲスト


 この物語から通信機器にスマートフォンが登場します。早河シリーズ本編は2009年までの話ですからスマホは登場しません。

総務省のデータでは作中時間の2011年のスマホ保有率は29.3%。スマホを持っている人はまだ少数の時代でした。


Guilty secretでスマホ持ちなのは赤木、国井、シークレットゲストのあの人くらいでしょうか。芽依もまだガラケー使用です。

スマートフォンとガラケーを表記分けしているため、作中の「携帯電話」はガラケーを指しています。

2011年はタブレット端末元年とも呼ばれてるそうです。タブレット端末が豊富に登場した年でもあり、スマホと共にタブレット端末も登場させました。


 登場人物欄に記載のないシークレットゲストは早河シリーズではお馴染みのあの方です。

佐藤の名前を登場人物欄に書いちゃったらサプライズにならないからねー!

そして早河が勘づいています。早河は佐藤生存説を推していたからね。


国井が美月を嫌らしい目で見てた時の佐藤は静かなるぶちギレしてました。俺の美月をやらしい目で見てんじゃねぇ!やっぱりお前コロスゼ✨みたいな。

この話では佐藤は39歳になっていて本編よりもさらに渋みの増したイイオトコになっております♥️


 この先の物語は短編集【masquerade】の【story6.Bay of Love】~完結編【魔術師】に続きます。

ここから早河シリーズに興味を持っていただいた方は、ぜひ早河シリーズ本編をご覧くださいませ🍀


     あとがき END

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Guilty secret 結恵🌙(yue) @mozukuchan

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