異世界昇天

naka-motoo

異世界転生して人生をやり直そうと思ったら実は元いたところが異世界で現実に戻ってしまってやりきれないわたしたち

 異世界に行くためにはここが現実世界である必要がある。


 現実世界の定義をいくつか考えてみる。


・モノを食べないと生きられない。

・一応社会的なルールがある。

・取り敢えずの兌換ツールはお金である。

・寿命が一応ある。

・普通誰かに対して酷いことをすると反撃される。

・不条理なことは多々あるけれども真摯なひとたちも少なからずいる。

・暗黙の美醜の基準がある。

・貧富の差がある。

・戦争なんかも起こっている。

・虐殺なんかも起こっている。

・「これが現実だ」という口ぶりをする人たちが少なからずいる。けれどもそう口にする人たちの現実は意外と厚遇されていたりする。

・現実逃避しようとする人たちが実際に逃避したとして逃げおおせられた試しがない。

・とても深甚ぽく見える葛藤を経て高度に政策的な判断だとこの世の最重要人物と名乗るひとたちが最重要課題と位置付けようとして最重要の職務ポストと自称するものを持って最重要の議論の場となんとなく衆目の意思を操作して思われている場を与えられて決定したはずのことが実はあみだくじのような長閑さで決められていたりする。

・スタッフを召使いのように勘違いしている似非セレブのレストランでのオーダーミスは大抵似非セレブ側に問題がある。


「上記に8割当てはまるのであれば概ねそれは現実世界だと判断して、誰かが無責任に『異世界へ誘おう』と声をかけてきても受けて差し支えない。現実世界そのものが耐えきれないぐらいに嫌なのであれば。けれどももし該当項目が5割を切るようであればアナタの居る世界は既に誰かにとってだけ都合の良い異世界である可能性が強い。たまたまアナタにとっては不都合な世界だというだけで。そういう場合は現実世界に戻ってしまう事がよくある。どうする?」

「え」

「繰り返すけどアナタが現実とういうものをとても過酷なものだと思っていて絶対にそういう世界から逃げ出して異世界に転生したい、あるいは現実世界には決して戻りたくないと思っているのであれば今アナタの居る世界が現実世界なのか異世界なのかを厳密に判断しないことにはお互いにとって不利益となる。だから、どうする?」

「・・・自分で選択したくない」

「そう」



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