双子のヒロインが迫ってくる……どっちもどっちで選べねえ……

にーりあ

序①

その女は俺から見ても超絶美少女だった。


高校の入学式で代表挨拶をしていたその女は、他のどの女よりも眩しく、際くっそかわいかった。そう、賢者である俺の股間も有頂天になる程だ。


俺は下校時その女の後をつけた。


ストーカーとして怪しまれないよう最大限の注意をし、俺はストーキングを開始した。


そして誰もいない路地に差し掛かった時、俺は行動を決意した。陸戦強襲である。


「あ」


女は俺に気がついた。同じ高校の制服を着ていたせいで、初見で変態とは見抜かれなかった。


その瞬間、俺は勝利を確信した。勝負の分かれ目、逃げるという千載一遇のチャンスをその女は逃したのだ。


この一瞬で、俺は全てを理解した。運命は、こっちに味方していると。


「こんにちは! あぁ、すごい偶然! 確か今日、入学式で挨拶してた方ですよね」


「こんにちは。ええ、と。そうですけど――」


「(馬鹿が。お前は既に我が術中の中だ。その繕い笑顔を繕えない程の事がこれから起こるというのにまったくめでたいものよ!)」


俺は女との距離を駆け寄る事で一気に詰めた。


このまま脱皮させてやる!


そしてお楽しみだ!


――その時。


「えっ?……」


俺は何かに躓いた。


事を焦りすぎた。勢いをつけた俺の体が、俺の意志とは関係なく宙に投げ出された。


何かにつまづき、俺は女に覆いかぶさるように盛大にコケた。


そして女を偶然巻き込んで倒れたらよくわからないが柔らかい膨らみのようなものに掌が触れたので反射的に揉みしだいた。しかも勢いがつきすぎていた為顔が前のめりになってしまっていて、偶然その先にあった女の唇に自分の唇が重なってしまった。流石の俺もこれには動揺し驚きの為無意識でこの時口が開いたのだが、何故か相手も同じように驚いたのか口を開いた為口が重なり中で舌と舌がごっつんこしてしまった。それでさらに慌てた俺はすぐに離れ態勢を立て直そうとしようとした結果女も離れようとして俺の下で馬鹿見たく動いたものだからそのせいで俺も上手く動く事が出来ず動揺に動揺が重なり、お互いがお互いでお互いの舌を絡めまくってしまった。


なんだこれ。


おかしい。豪運が過ぎる。


正直ここまでやるつもりは無かったのだが。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あなたを訴えます」


女は言う。


俺は困った。


「事故なんです。ワザとじゃないんです。どうか許してください」


俺は頑張って弁明した。


実際事故であった。それは本当だ。


「何でもしますか?」


女がいう。


これはあれかな、なんでもしますからどうか許してください的な、アニメ的なセリフを彼女は言っているのかな。


でも俺、なんでもはしない主義なんだよね。っていうか話飛躍しすぎでは? なんだよなんでもしますか? って。お前女のくせに慎みという言葉を知らんのか。


「許していただけるのならある程度の事ならするかもしれません」


ひどくあやふやな物言いでそれっぽいことを言ってみた。相手の出方を見るためだ。


「ではあなたに一つやってもらいたいことがあります」


「はぁ、なんでしょう?」


「あなたのその恐ろしいまでの行動力を見込んでお願いします。どうか私の妹の手助けをしていただけませんか?」


「……手助け、と、言いますと?」


「実は私の妹は、登校拒否児なのです」


お姉様による妹のバッドステータスカミングアウト。


突然の依頼に俺の頭にはクエスチョンマークが浮かぶ。


「えっと、俺に、女のひきこもりをどうしろと?」


「人の妹を引きこもり呼ばわりですか。さすがです。貴方は私の想像以上の人なのかもしれません。しかしここで貴方の取れる選択肢はふたつのみ。やりますか? やりませんか? やらなければ告発します。十秒上げましょう。十、九、八……」


「待って、待って! やらないとは言ってないけれども! でもなにをどうすれば――」

「そうですかやってくれますか。ではあなたにチャンスを授けましょう。今回の事件について、訴えるのは保留とします」


「あ、はぁ。それはありがとうございま――」


「加えて――」


俺の目を見据え、美女が柔らかに微笑む。


「もしもあなたが妹の登校拒否を直し更生させてくれた暁には、成功報酬として私の処女膜を破る権利も与えましょう。破格ですね」


俺の手を取り、握り、美女が柔らかに微笑む。それはまごう事なき獲物をしとめた悪魔の会心の笑みだった。


「それは破格ですね、本当に。美少女が台無しになるくらい」

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