六頁目

 それからです。

 沈黙の国に、声無き“死に際の声”が溢れたのは。

 

 人が死なない日はありません。

 次から、次へ、絶え間なく。

 色んな人が死に続けます。

 

 なのでもちろん。

 

 人々は、それら死の声を聞き続けました。

 毎日、聴き続けました。

 

 ……そうして。

 

 そうして、やっと。

 沈黙の国に秩序と安定と活気が、戻ってきました。

 彼らの心に、安堵が生まれたからです。

 

 かつてのように、何から何までわからずとも。

 息絶える瞬間にまた、他人の心と繋がれる。

 生きるのが苦しいのは、自分だけではない。

 誰も彼も殺したくて、死んでしまいたいんだ。

 

 そんな安堵が。

 死の共有、それだけが。

 

 以前よりも強固に柔軟に、人と人との心を繋ぎ、

 秩序と、安定と、活気と、幸福を産んだのです。

 

 

 沈黙の国の人々は、今日も生きます。

 

 誰かの沈黙する様を心に刻みながら。

 

 自らの沈黙の時を心待ちにしながら。

 

 

 黙々と、幸せな心地で。

 

 生き続けているのです。


 (終)

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沈黙の国 梦現慧琉 @thinkinglimit

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