今日、君のために

千丈峻士郎

第1話

「1番の愛情表現って何だと思う?」

「急になに…君以外の女の連絡先を消すこと?」

「私はその人のために死ぬことだと思うの」

「死ぬって…残された方は迷惑だよ」

「それだけ相手のことを思ってるってことよ。自分の存在を消せるほど。それで私の「愛」は完成。」

「もう相手のこと考えてないじゃん。」

「そうよ、結局は一方通行の自己満足。そこまでできる私は本物の愛を知っているって思いたいの。」

「へ〜そんなもんか。そこまでされたら僕は本当に困るよ。絶対やめてね」

「問題はそこまでさせる相手がいないってことね。アイス食べたい、買ってきて」

「…僕は?それより食べすぎ、死ねよもう」

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拝啓

お手紙拝見

本日で海軍飛行予科練習生を卒業いたしました。

念願の操縦士になることができます。

零戦という飛行機に乗ります。

これが素晴らしい飛行機だそうです。ものすごく小回りがきいて、2、3発機銃を当てれば米国の飛行機なんて簡単に落ちていくと聞きました。

そんなすごい飛行機に乗せてもらえる日本に生まれて良かった。お国のためにしっかり戦ってきます。この日本は神の国です。負けるわけがありません。


お父さん、お母さん、妹ちゃん

体調いかがでしょうか?お兄さんと同じ飛行機に乗れることを光栄に思っています。お兄さんの分まで僕は頑張ります。僕が戻ってくるまで家のことは任せました。無理をなさらず頑張って下さい。また、帰るときに連絡します。


ーちゃん

僕が戻ってくるまできっと待っていてください。 ーちゃんの作った料理をまた食べたいなあ。からなず戻ってきます。

心配は無用です。


敬具

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拝啓

お手紙拝見

そう心配をなさらないでください。僕は元気です。

この度十死零生の任務に就くこととなりました。とても名誉なことです。たくさんの仲間が散っていきました。今度は僕の番です。お国のために戦ってきます。

僕の覚悟はできています。必ず任務を遂行します。たくさんの米兵を道連れにしてやります。

どうか悲しまないで下さい。

僕が行かなければ日本が敵に攻め込まれます。敵に攻め込まれたらみんなが危ない。危ないのは僕だけでいいのです。みんなは無事でいてください。それだけが僕の願いです。

日本のために死ねて光栄です。


お父様、お母様

今までありがとうございました。おかげ様で立派にお国のために死ぬことができます。親孝行といえるものをできずに申し訳ありません。先立つ親不孝をお許しください。これからもお身体に気をつけていつまでも長生きしてください。一足早く天国で待っています。


妹へ

お父さんとお母さんに迷惑をかけてはいけません。お兄さんは立派でした。僕も立派に任務を果たしてきます。僕が死んでも泣いてはいけません。きっと強くなってください。お国のために、君の未来のために。

僕がいなくなったらお父さんとお母さんを頼みます。


ーちゃんへ

ーちゃんは僕のことを忘れて下さい。僕を最初から存在しなかったことにしてください。

ーちゃんは美人だからすぐに相手が見つかるでしょう。その人と幸せになってください。僕はーちゃんに夫らしいことは何もできなかったけど、ーちゃんのことを世界で1番愛していました。死ぬことは怖くありません。

ーちゃんを愛しているから。

僕は幸せだ。

君のために死ねるから。

きっと幸せになってください。

でもーちゃんは思い出しちゃうかなあ。ーちゃんは優しい子だから…。

いつまでも天国から見守っています。

心配しないで。

ーちゃんの夫で良かった。


最後にわがままを言うなら…冷たい甘味を食べたい。


敬具

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今日、君のために 千丈峻士郎 @natusaki

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