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 3度目の7月19日。


「立夏! 起きなさい! 終業式に遅れるわよ!」

「わかってる!」

 立夏は準備をすると、母親の焼いた食パンをくわえながら玄関を出た。

「今日で冬也ともお別れか……」

 自転車に乗って立夏は学校に向かった。


 学校の自転車置き場に着くと、立夏は冬也が来るのを待った。

「おはよう」

 冬也がやってきた。

「おはよう。進路調査書出した?」

「いや、まだ。立夏は?」

「出した」

「進学?」

「進学」

 お決まりの会話が続く。そして教室に向かった。



 終業式が終わり、立夏は冬也に呼び出されて屋上へ。

 3度目のこの日、冬也に言われることはわかっていた。しかし――。

「ありがとう」

(えっ? なんで、ありがとうなの?)

「ありがとう、立夏。これ、おまえが拾ってくれて助かったよ」

(ああ、そういうこと)

「別に……」

「これから言うこと、わかってるよな?」

「わかってる」

 冬也は立夏の手を握り「好きだ」と言ってキスをした。

(えっ? なんでキス!?)

「別れようって言うと思った?」

「あったりまえじゃない!」

「全て立夏のおかげだよ」

 そう言うとあのノートを取り出し、ポンポンっと手で叩くと立夏に渡した。そこには“立夏の願い”が書かれてあった。


 まだ夏は始まったばかり。

 けれど冬也は未来に帰っていった。

 夏が消えた未来に……





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2回目のタイムリープ とろり。 @towanosakura

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