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「ただいまー!」
家に着いた立夏は挨拶を済ませると、部屋に直行した。
「ノート、ノート、青いノート」
机の引き出しにしまっておいたその不思議なノートを開くと、立夏は早速願いを書いた。
――
【立夏の願い】
7月19日。
冗談みたいなことを冬也に言われた。冬也は1000年先の未来からやってきた、と。それでも私は信じてみることにした。いずれ冬也がいなくなってしまうけど……。
4月から付き合いだして約3ヶ月。そこそこ思い出もできた。だからもう悔いはないよ。あっ! でも最後にキスをしてみたかったな。ファーストキス。でもいいや。冬也、バイバイ!
最後に願いを書くよ、冬也。
冬也に夏が訪れますように
by 立夏
――
すると空間が歪み、時空を越えた。
「わああああああああああああぁぁぁぁぁぁああああああっ!」
どんっ!
「いったーい!」
7月18日。
立夏は学校の廊下に投げ出された。
目の前にはあの青い不思議なノートが落ちていた。
「よし! あった!」
ノートを拾い、冬也を探す。
「確か冬也は屋上にいるはず」
立夏は駆け出した。冬也の元へ。高鳴る胸を押さえながら。そして――。
ばーんっ!
勢いよく扉を開いた。
「冬也っ!」
数人の男子の友達と遊んでいた冬也が振り向いた。
「立夏じゃん。どうした?」
ズンズンと冬也に近づき「落とし物! 今度は絶対なくすなよ!」と言ってノートを冬也の胸に押しつけた。
踵を返し、戻ろうとする立夏の手を冬也は掴んだ。
「おまえ、これが何か――」
「大切なものなんでしょ。私にはわかるの」
「……」
「またね」
立夏は寂しそうにそう言った。まるで永遠の別れのように。
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