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教室で机の中を調べる冬也。立夏はその姿を後ろから見ていた。
「ねぇ、冬也の探してるのって小さい青色のノート?」
「えっ! なんで立夏が知ってるの!?」
「だってそれ家にあるから」
「そ、それたぶん俺の! 返してくれ!」
「えー。どうしよっかなー。あのノートには不思議な力があるしなぁ」
「……」
「それに冬也と別れたくないし」
「……」
「遠距離恋愛でもいいからさ」
「おまえの思っている以上に遠いぞ」
「はぁ? 海外ってこと?」
「1000年先の未来だよ」
立夏は目をパチクリさせた。
「じょ、冗談でしょ?」
「本気だよ」
冬也はシャツから肩をのぞかせ、立夏に見せた。
「この紋様が見えるだろ?」
「見える、けど、何それ」
「荒廃した未来から送り出されるときに刻印されるものだ。どこにも逃げられないように」
「荒廃? 未来はどうなっているの?」
「科学技術は進んでいるが、それにともなって自然は破壊された。毎日が凍えるような寒さの大寒期だ。もちろん夏なんてものはない。俺は生まれてから一度も夏を体感したことがなかったから、1000年前のこの世界に“時間移動”をしたんだ」
「そんな……」
「あくまで一つの未来だ。俺のいる未来がそうなってしまっただけだ。未来を創るのはおまえ達だろ」
「でも……」
「とにかく俺は“時間移動法”に違反した。おそらく立夏がそのノートを使ったからだろう。だから未来に帰らなきゃいけない」
「だから別れようって言ったのね……」
「……」
「もう1回……」
「ん?」
「もう1回だけ使わせて」
「あのな――」
「お願い!」
「……」
冬也は良いとも悪いとも言わなかった。少し思案していたが結局口を開かなかった。
立夏はそれを肯定的にとらえて、家に向かって急いだ。
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