第5話 痴漢
ライブ当日。
ジリリリッ!ジリリリッ!
なんだよ‥朝からうるさ‥
「今何時だ!?」
時計の針は10時半すぎをさしていて、待ち合わせの時間からもう30分以上すぎていた。
「やべー!急がねーと!!」
当日が楽しみ過ぎて、昨日なかなか眠れなかったせいで、完全に寝坊した。
急いで荷物を持って、待ち合わせ場所までダッシュで行く。
待ち合わせ付近に着くと、頼希のヤツが壁に寄りかかって辺りをキョロキョロしていた。
「おーい!わりぃ、寝坊した!」
「あ、全然待ってませんから!オレも寝坊したんですよ!」
あぁ‥やっぱりか‥
なんとなくコイツは寝坊して来ると思っていたけど‥
そんなこんなでオレ達はライブ会場へ行くために電車に乗る。
目的の電車は満員電車で立ってるのがやっと。少しでも揺れると人にぶつかってしまうほど満員だった。
頑張って立っていると、
サワ‥
「!?」
誰かにお尻を触られた。
は!?え!!?
相手はオレが男だと気づいていないのか、ずっとオレのお尻を触ってくる。
え!?これって痴漢!?
体から血の気が引いていく。
と、とにかくやめるように言わないと!
「‥あ、あの」
後ろを向くと50代ぐらいの男がオレのお尻を触っている。
無理だーー!!
あんなのに言えるわけねぇー!
なんかキモいし、怖ぇーよ!
なんだか痴漢にあう女性の人の気持ちが分かる気がする‥‥
ただ、ただ、恐怖しかない。
怖い‥‥
だんだん目に涙が浮かんでくる。
そんな時触ってきた手の動きが無くなった気がした。おそるおそる、後ろを振り向くと頼希があの男の手を掴んでた。
「アンタこれ犯罪だってことわかってんだよな?」
その時ちょうど駅に着いた。
男は頼希の手を振り払って人混みの中に逃げて行く。
「センパイ大丈夫ですか?」
「わりーな…」
ヤバい震え止まんねぇ…こんな格好悪いとこ見せたくない…
「大丈夫、大丈夫、こんなのすぐおさまるって」
「センパイちょっとこっちきて下さい」
「えっ、どこに…」
連れて来られたのは公園。
噴水前のベンチに座ると、
「ちょっとここで待ってて下さい」
そういって近くの自動販売機の所に行く頼希。
「ほら、これ飲んで」
「ありがと」
頼希が渡してきたお茶を飲んだら落ち着いてきた。
「悪かったな、格好わりーとこ見せて」
笑いながらそういうと頼希は悔しそうな顔をした。
「…大丈夫ですよ、ってかセンパイこそもう大丈夫なんですか?」
へらって笑って聞いてきた頼希。
なんだ今の、オレの見間違いか‥?
「あぁ、飲んだら落ち着いたよ、サンキューな!」
「じゃあ、もう行きましょ!早く行かねーとライブ始まりますよ!」
「そうだな、行くか!」
センパイ、好きです。 苺色 アリア @Itigoiromaria
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。センパイ、好きです。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます