―Continue to the next volume―
差し伸べた手を見たセナスティはアサトを見た。
アサトの言葉にタイロンは口を真一文字にし、ケイティは大きく息を吸い、システィナは胸に手を持って来ると、セラも小さく顎を引いて見せ、ジェンスは腰の剣の柄を握りしめ、クラウトはメガネのブリッジを上げ、アリッサは大きく頷いて見せた。
「…僕らは、このままなにも無く、この国を旅立てれればいいと思っていた…。シノブさんと出会い、そして、アルさんとの約束通りに夜の王討伐…、それからどんな敵に出会うかわからないけど、『アブスゲルグ』へ行って…コアを持ち帰る。…そう…、ココに帰るつもりだった…でも…。僕は…」
一同を見る。
「こんな国には…帰ってきたくない…。」
その言葉に、一同の表情が厳しくなった。
「今、自分が人間族と言う種族である事を、『恥ずかしく』思っています…。こんな国…。だから…行きましょう、王都へ!そして、何の目的で、このような事をするのか、容認するのかを聞きましょう!」
アサトの言葉に、セナスティが大きく息を吸うと見上げ、一歩踏み出したクラウトは、メガネのブリッジを上げた。
「…そうか…、じゃ…始めようか…」
その言葉に小さく頷いて見せるアサト。
「今度は…、人を殺す事になるぞ」
タイロンが目を細め、その言葉にも小さく頷く。そして…、アサトの差し出した手を握ったセナスティは立ち上がり、アサトを見ると小さく頷いて一同へと振り返った。
「…みなさん…よろしくお願いします!」
その言葉に笑みを見せる一同は、アサトへと視線を向け、アサトは振り返り、十字架に張り付けられているベラトリウムを見ると、十字架の下にナガミチが座っていた。
そのナガミチは、アサトを見ると小さく頷いて見せ、右手の握り拳を、アサトへと力強く伸ばして見せると、左胸を2度、叩いてみせ、いつになく厳しい表情を見せた。
その行動は、いつも見ている行動であり、その表情は…。
小さく頷いて見せ、心で言葉にしたアサト。
…これが新しい王の描く国なら、僕は絶対に容認できない、だから行きます、王都へ……。
その言葉が届いたのか、ナガミチは小さく2度、頷いて見せ、その背後から沈みかける夕日が一同を照らし、アサトらの影は長く…長く…長くなっていた……
『遥かなるアブスゲルグ Ⅸ』 -皇女の涙と『マモノの定義』-
遥かなるアブスゲルグ Ⅷ -『皇女の涙』とマモノの定義- さすらいの物書き師 @takeman1207
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