やり残したこと

 「ふー!何とか勝てた。」


 僕は傷だらけの桃太郎の状態で壊れた村を歩いていた。


 『全く、ぎりぎりだったな。』


 刀を杖代わりに急いで歩く。


 『ところで。何処向かっているんだい?』


 「簡単さ。ここだよ。」


 目の前には先程鬼と戦うまで居た場所。三匹の獣たちの横たわっている場所だ。


 三匹ともあのままの状態でいたから最悪の事態を考えていたが、辛うじて息は有るようだ。


 「えーっと。確か。」


 ガサゴソと腰を探る。


『もしかして。』


「そう言う事。」


 三匹の虫の息の獣たちの口に腰に提げた吉備団子を押し込んだ。


 弱々しくも口を動かしながら飲み込む三匹。


 次の瞬間。虫の息だった三匹は思い思いの方角に走り、登り、飛んでいった。




 吉備団子


 桃太郎の代表アイテム。その効果は動物に鬼退治を可能とさせる力を与えるもの。つまりは強化薬だ。




『最後にやりたかったのはコレ?』


「そう。彼らに罪は無いからね。」


そう言って刀を杖に彼はその場をあとにした。


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異世界御伽ファンタジー 黒銘菓(クロメイカ/kuromeika) @kuromeika

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