人間の、人としてのどうしようもない部分が、切ないすれ違い、ずれを生む。その点、秀逸に書かれていると感じました。
以下、少々ネタバレかも。
どうしようもなかったのは、たぶん全員なのだろうと思います。問題のある彼、そのままでいられなかった主人公、主人公の気持ちを認める必要のあった人、それぞれが、ある意味では人間らしい、そんな不条理の中にいます。
主人公の願いもまた不条理であり、人間らしいものです。これは“人”が書かれた物語です。
また、トライアングルは物語における人間関係の基本で、それをうまく成せていると思いました。
ずれた関係性の行き着く先まできちんと描かれているのが好印象でした。
失礼を承知で言ってしまえば、本作の主人公の女性がどうしても好きになれませんでした。
いつもならキャラクターが好きになれない場合は最後まで読むのが辛いことが多いのですが、すんなりと読むことが出来たのはひとえに作者様の文章の読みやすさなのかもしれません。
彼女の言うハッピーエンドがひどく矛盾を感じて、独りよがりで押しつけがましく。ああ、本当に人間らしい。とゾクゾクしました。
キャラは好きになれないのに、物語はとても面白くて不思議な魅力に包まれました。
別に書かれていらっしゃる関連作品を先に読んでから読まれたほうがよりこの魅力に包まれる気がしますので、オススメ致します。