2話 或る凡人の懺悔
今となっては……いや、今でも、自意識過剰だったのでしょう。
ですが、本当に「それしかない」ものを否定されるようなことが、果たしてそれ以外能のない者に耐えられるでしょうか。
私はそれほど強くありませんでした。
それからというもの、私は周囲からの期待の中、「自分のやりたいこと」さえも定められず、ただ承認欲求が暴走しているちぐはぐな存在だったのです。
ただ、周りからの評価が欲しい……認めてほしい、自分があるべき場所が欲しい。
それは、製作者ではない。自己顕示欲の魔物でした。
今まで何も自分を磨いてこなかった存在が、ただ欲望のままに暴れまわっているだけの、醜い魔物。
目論みは成功せず、何もかも疲れ、しばらくしてまた怠惰な日常を過ごしていた毎日が戻ってきました。
そんな時、小説家になろうで異世界ものを書こうと決めたのは、本当に思い付きでした。アマチュアの異世界ものが流行っているのだから、私も書いてみたい。本当にそれだけの甘い理由でした。
小説の基本的なルールを調べ、一話あたりの適切な文量を試してみたり、ノウハウサイトを見てみたり……しかし、私はこれまで本当に小説を書くということの基本も学んでいなかったのです。
でも、それでも書いてみたかった。内なる衝動を、形にしてみたかった。どうしても抑えきれなくなったものが、溢れて出てきたもの。それが『異世界に転生したら最強武器ガチャで運ゲー無双しまくりです』だったのです。
この小説は、ランキングには載ったことがありませんし、ブックマークは100件未満です。でも、書いていくうちに、小説を書き続けるのがどんなにつらいか分かって、反応が貰えるのがどんなにうれしいか分かってきたのです。それは、自己満足だったかもしれませんが、こんなに心地の良い自己満足はありませんでした。
そして何より、10万字を書き上げた時、やっと自分の作品を取り戻せた気がしたのでした。地の底で泥にまみれ、雨水をすすり、這いつくばっているような取るに足らない存在でも、希望は必要だったのです。
毎日死んだように生きるよりは、笑われても、嘲られても、自分の居場所を主張したかった。
このエッセイでさえ、非才の凡人の心の叫びなのです。
一握りの人のように輝けるような栄光は手にできないかもしれない。それでも、見苦しくあがいてみる。それしか私に取れる選択肢はなかったのです。
そして、小説を続けてきた今、私は悩みがあります。
それは、自分がさらに上を目指すには足りないものが多すぎるということ。経験、センス、知識が足りないということ。そして、それこそが人生で培ってこなかった代償だということ。
しかし、これらは書いてみなければ分からなかったことです。書いてみなければ、ぼんやりとした不安で終わっていたのです。
そして知ったことがあります。
創作は、小説は読んでいる人も書いている人も、真剣に書いている人には優しいということ。創作は時に残酷だけど、それだけではない喜びがあること。
もし、私と同じような悩みを抱えている方がいらっしゃったら。
ぜひ小説を書いてみてください。あなただけの小説を書いてみてください。きっと綺麗なことばかりじゃないけど、何かがあなたの心に生まれます。
私という凡人が、凡人だからこそ言います。もやもやしているよりは、ずっといいものです。
見苦しく生きても、それでもいい。何もしないよりはずっといい。そんな思いで生きている人もいることを、心の隅に置いてくださると書いた甲斐があるというものです。
創作は、綺麗なことばかりじゃない。~いかにして私は小説を書き始めたか~ まぐろ定食 @maguro17
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