独白殺人事件 〜見ている世界は人によってこんなにも違う〜

TNゴン汰

「独白殺人事件 〜見ている世界は人によってこんなにも違う〜」

1 沢田の独白。


「俺がAさんを殺した動機はAさんが俺を邪魔者扱いにし、さんざんいじめたからです。Aさんの自分に対する扱いに我慢できなくなりました。よって殺しました」


この文章(独白)を読んで読者はどのように感じたでしょうか?


ある読者は沢田さんの言葉を真に受けて「そうか。Aさんに邪見にされて恨みがあったのか。でも殺すまでに至るのは良くない」と思ったことでしょう。


2 次に鈴木さんの証言です。


「私は沢田さんをよく知る者ですがAさんは沢田さんを邪険になんて扱っていませんでしたよ。むしろ好意的に優しくしていたと思います。なぜAさんが殺されたのか理解に苦しみます」


この証言で読者の方は「ん?沢田さんと鈴木さんで意見が食い違っているぞ」と思われたのではないでしょうか? 


ではさらに警察による取調べも入れましょう。


3 警察。


「鈴木さんの証言が本当かどうかは分からない。沢田本人の証言の信憑性も分からない。物証や証拠が必要だ。そして精神鑑定をやらせたところ沢田は統合失調症だと判定された。つまり沢田は病気でAさんに対する被害妄想から殺害したと思われる」


これで一見落着でしょうか。


では全てを知る神の視点から見てみましょう。


4 神。


「Aさんが沢田に殺されたのは事実。ただ沢田は統合失調症じゃない。病識をうまく利用した確信犯だ。おかしなフリをしているのである。


鈴木さんの証言だとAさんは沢田に優しく接していたように見えるだろうが家の中(見えない所)では散々罵倒をしていたのだ。それに恨みを募らせたのは本当であり、だからこそ嘘発見器でも見破れなかった。」


「沢田は病気のフリを完全に全うした。完全犯罪である。そしてそのために普段から統合失調症用の薬を飲んでいた。Aさんに相当の恨みを持っており、完全犯罪を達成するために薬を何年も前から飲み続けていた。」


これが神が知る真実である。


5 最後に総括。


どうでしょうか? 


もちろんこれらは僕が作り上げた創作話ですが証言の食い違いは日常茶飯事ですし、警察による物証・証拠・精神鑑定さえも完全ではないのです。


神の視点を知った上で最初からもう一度文章を読んでください。


この人は嘘を言っており、この人は本当のことを言っているなど見え方が異なったのはないでしょうか?


このように「知識がある上で見ている世界」と「知識がない上で見ている世界は異なる」のです。


今回は犯罪の話でしたがいくらでも応用可能です。


ドラマでも全話見終えて結論を知ってからまだ最初から見ると「ここが後の伏線か」とわかります。


知識があり真実を知っている人とそうではない人とでは同じ話や事実を見ても「見ている世界が違う」のです。


これは怖いことです。


読者のみなさんも知識や体験していないで物事を見たり語ることがいかに怖いことか実感してほしいと思います。(僕も自戒を込めています)


最後に人は自分の見えている世界から独白にせよ証言したり主張します。


その独白・証言・主張は自覚がないものと自覚があるもの(確信犯)の2タイプがあります。


自覚があり自分に有利に独白・証言・主張するのがいわゆるポジショントークです。


人は自分の立場・立ち位置を有利にしたくてよくポジショントークをするので発言する人の立場や地位はよく見ておく必要があります。


知識がなかったり錯覚や勘違いにより自覚がない主張をする人もいます。(悪気はない人です)


ポジショントークなのか悪気がない自覚がない主張なのかは判断しないといけません。


神の視点から見ることができたら真実は一目瞭然ですが大半の話はどこかのポジショントークや無自覚発言などから判断しないといけません。


真実を知るのは神のみとはよく言われますね。


ではこの辺で。

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