原初開闢より紡ぐ『イマ』

神代より喪失した「神」。人は神と歩みを違えたのか?
連綿と続く歴史は様々な媒体に存在し、人類史でありながら星の記憶でもある。
本作は、「人」と「神」の「叙述」に通ずる一つの「詩」だ。

まず先に述べると、本作には非常に多くのファクター、その数々が煌めいている。これは単一の知識や体系からの出典では無い。
作者の膨大なる智慧の糸で織り成す壮大な作品。巧拙は問うまでも無く、読み終えた時の鳥肌を以て知る事となる。
詠み手が産んだ詩に燦然と輝く知識の光は、ただ読み手が瞳で捉えるのでは無く、読み手の脳が咀嚼し、嚥下されてこそ初めて輝くのだ。

喪われた創世の主とその物語を、我々は如何に識るか。果たして可視なる物が世界の総てなのか。
万象は「叙述」に産まれ「記述」に終わる。構成する主体は既存、画一の姿のみが世界では無い、と本作の形を成して訴える。

恐るべきは、本作が「SF」だと言う事だ。
作者が細部にまで書き込んだ叙述は、神を宿らせ我々へ息吹を感じさせる。
刹那の連続こそ未来に在り。さて、我々が生きる世界は一つでは無い。
描いた軌跡は枝葉を拡げて雫を実らせる。熟れたそれは叡智に換わる。

緻密に、荘厳に産まれた果実。それが本作、『人神叙事詩』だ。
臆するな。文体は決して難解でも抽象的でも無い。
一歩、踏み出す。君達に一匙の勇気さえあれば、この詩は君を待つ。

さぁ。新たなる世界へと今、進め。