おまけ  田代 黄太

 駅ビルの本屋に、漫画雑誌を買いに来たら、新刊コーナーで本を見ている同い年くらいの女の子がいた。

 スニーカーにジーンズ、水色のハーフコート。

 髪はショートカットで、美人ではないが人の好さそうな顔立ちのボーイッシュな、オレの好きなタイプ。

 ちょっと声を掛けてみたくなって近づくと、その子はオレを見て、少し目を見張ってから微笑んだ。脈ありか?


「田代君、久しぶりだね。」


「えっ?あっ…う、一色さん!えっ、だいぶやせ」


「髪切ったから、わからなかった?」


 髪もだけど、体が…。


 その時、友香ごめん、待った?と現れた男が、オレをけん制してか、彼女の腰に手をまわして引き寄せた。えっ、彼氏がいるのか。


 うん?彼氏のこの端正な知的メガネ顔、どっかで見たことあるな。


 俺より先に、メガネ君がオレのことを思い出してくれた。


「お前、黄太おうただろ!久しぶり、元気そうだね。」


「あっ、金城…あきちゃん!」


「なになに、田代君とあきらくん知り合い?」


「あきちゃんとは小学生の頃、習い事が一緒だったんだよ。」


「友香と黄太は、どういう知り合いなの?」


「青木君もだけど、田代君も中学の時のクラスメートなの。」


「なに、あきちゃん、青木も知ってるの?」


「高校のクラスメートだよ。」


 懐かしい話を少しだけした後、笑いながらの別れ際、あきちゃんを先に行かせた一色さんがオレに近づいてささやいた。


「田代君、私、65kgじゃなくて、70kgだったんだよ。」


 彼女はそう言うと、ニヤリと笑って走っていった。


                     おわり。続編に続く。

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愛すべき姑息な人々1 姑息なダイエット 清泉 四季 @ackjm

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