第2話 本当の賞味期限は心の中に

 ここに一本の清涼飲料水があります。


 商品名は、ライトフルーツソーダ「天空の城ラピュタ」。


 未開封である。



 さてここで問題です。


   問.賞味期限はいつになっているでしょうか?



 製造販売は味の素。今を遡ること三十三年前の1986年6~8月の限定商品だった模様。当時はそんな風に意識してなくて、いつの間にか店頭から消えていた印象でした。

 瓶タイプと缶タイプがあったそうですが、直に見たことがあるのは瓶タイプのみ。テレビコマーシャルでも瓶タイプを映したバージョンしか、記憶にない。


 瓶も缶もデザインが二種類あり、味も二種類作られた。すっかり忘れていたので検索してみたら、シトラスミックス味とレモン&ライム味だそうな。

 手元の瓶は、レモン&ライム。ちなみに果汁3%。

 レモン&ライムも、シトラスミックスの方も買って来て、飲んだ覚えはあるのだけれど、味は両方ともほとんど覚えていません。確か、通常のソーダとの違いが分からないレベルだった。


 だからもし仮に賞味期限が切れていなくても、味を知っている人は、わざわざ開封してまで飲みたいとは思わないでしょう。

 ときたま、この「ラピュタ」の空き瓶・空き缶が売られているのを見掛けて、結構いい値段が付けられているようですが、開けない方が(多分)値打ちがあるはず。ただ、中身が入ったままだと、(多分)売ってはいけない気がする。

 開栓できない状態にすればいけるのかな?



 それはさておき、そろそろ答合わせの時間です。


   問.賞味期限はいつになっているでしょうか?


   答.なし。


 答はなし。

 そう、永遠にいついつまでも飲めるんです!なわけはなく。


 賞味期限の記載がありませんでした。

 もちろん、消費期限もです。

 製造年月はあります。キャップに書いてあるはずなのですが、「100円」の値札に隠れているみたいなので、見てません。


 ざっと調べた限りですが、当時は食品衛生法などにより、食品には製造年月(品種によっては日を含む場合も)を記載すればよかったみたい。

 そして「ラピュタ」発売の約九年後。

 1995年4月に、賞味期限もしくは消費期限の表示義務に切り替わったそうな。


 ということで飲めるわけないのですが。


 親戚の、ジブリアニメ好きな子がこの「ラピュタ」を見付けてしまい、飲みたいと言い出して聞かないので、困ってます。

 冗談のつもりで「賞味期限が切れてなかったらね」と言ったのもまずかった。まさか、ないとは思わなかったもので。



 普通に開けて、ほら飲めないよっていうのも、何だかもったいない……。

 そういえばだいぶ昔、朝日放送系の「探偵ナイトスクープ」で、何十年も前のレトルトカレーを開けて食べてみたい!という依頼を取り上げていた記憶があります。

 あれは結果的に食べられたからよかったんですけど、「ラピュタ」はまず飲めないでしょうから、メーカーが嫌がるかな?


 皆様、よい知恵がありましたら、お貸しください。お願いします。




           *           *


 上のエッセイもどきを某小説投稿サイトに上げてから三日後。


<続いてのニュース。

 四日午前、S区MのLさん宅に空き巣が侵入しました。盗まれたのは清涼飲料水一本のみということで、話題になっています。

 犯人はLさん宅の留守を見計らい、門扉を通って庭へと回ると、窓ガラスを割って居間に侵入。カメラ保管用のショーケースに入れてあった未開封の清涼飲料水『ライトフルーツソーダ「天空の城ラピュタ」一本を奪い、逃走したものとみられます。犯人はまだ捕まっていません。

 この「ラピュタ」は、ジョナサン・スウィフトの――>


 おわり


※フィクションです。念のため。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

もしも空を飛べたら 小石原淳 @koIshiara-Jun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ