音と輝きに耳を澄ませ――そなたは、きっと美しい

 機械仕掛けの文明が、針の音を鳴らす都市、サブリエ。
 大きな歯車のような世界。陰謀という小さな歯車が、音を鳴らす中。
 娼館で働く一人の少女、ラトラナジュ。
 そこに通う一人の男、アラン・スミシー。
 二つの歯車がかみ合った瞬間、運命の歯車が大きく動いていく。

 サブリエという名の大きな時計のような舞台の上で、闇をまとった少女と男性が舞い踊る。
 二人の一つ一つの仕草や言葉から匂い立つのは、ほろ苦い大人の恋愛。
 そっと頬を撫でる指先、彼の服の香りから、どうしようもなく狂おしい気持ちにさせられるのに、甘えたくなってしまうのは何故だろう。
 そんなさりげない心の機微が、文章の中で見え隠れする。
 そんな二人のやり取りの水面下で、ミステリアスな運命が共鳴を始める。

 組織、陰謀、技術――全てが重なり合う中で。
 気持、信頼、吐息――二人の想いが交錯する。

 文章が織りなす数多の『歯車』の運命劇を見届けろ。

その他のおすすめレビュー

アレセイアさんの他のおすすめレビュー52