ロボットものの断片

「2号機、3号機、反応途絶えました」

 無線に激しい騒音が交ざる。巻き上がった砂が西の空に高く暗い壁となってそびえている。一条を乗せたジープは壁に沿って南へ疾走していく。太陽光を直に受けて目が痛くなる。砂が空が銃がネガの色になる。

『双腕重機風情がァ!』

 指揮官の怒号。

 ジープが丘を飛び越えて跳ねた。銀の機体を一条は見た。二本のアームを空に向け機銃を掃射している。狙いは国連軍の鳥型無人機。エンジンの轟音が灼熱の大気を揺らす。

『旧式の機銃をくくりつけただけでよくもまあ』

 ジープの運転手のささやきが一条のヘッドギアに入る。生の声は騒音にかき消される。

「僕は好きですよ、あの逞しさ」

「俺には不気味にしか見えねえが」

 控えめな爆発音。残った1号機が撃墜された。

「無人機隊全滅しました。どうします?」

『ギリギリまで張りつけ。やつらレーダーの効かない砂嵐の中に逃げ込むはずだ』

「装甲車じゃねえんだ!飛ばされちまうぞ!」

 運転手が怒鳴る。

『あれを集落へ近づかせるわけには行かない。攻撃ヘリが来るまで耐えてくれ』

「畜生が!」

 ジープは鋭く右に旋回した。

「一条、戦場ってものを見せてやる。機銃にあたるなよ」

 遠心力に振り回されて一乗の肩が運転手に触れる。壁が目の前に迫っている。

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断片供養 時雨薫 @akaiyume2

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