聖なる剣を所持する少女。その胸に秘めるは、家族を殺した者への復讐。
八歳の少女が、伝説の聖剣を引き抜いた。その噂はその国にとどまらず、近隣諸国に轟いていく。
聖剣パンタナ・ティーグナート。
今から百年前に魔王を倒し、平和な世の中をつくった英雄がもっていた聖剣。その聖剣が突きたてられた岩の台座にはこう記されている。
『世界が恐怖に包まれる時、この意思ある聖剣は甦る。再び聖剣を持つ者を選びだし、その者を英雄へと導くであろう』――と。
だが、世界は恐怖に包まれていなかった――。
何故、聖剣が復活したのかは分からなかった。
しかし、それでも民衆は湧き上がる。
自分たちの住む世の中がよくなることを信じて――。
一方、様々な国と人々の思惑があふれる中、少女は忽然とその姿を消していた。最初は様々な噂していた人々も、やがてその存在を忘れていく。
『やっぱり、あんな小さな女の子に、世界を変えることは無理だったんだ……』――と。
やがて二年の月日が流れ、人々の記憶から少女の存在が消えていく頃。
突如、その少女は戻ってきた。
漆黒の乙女と一匹のギガーゴリラと共に、冒険者として。
そして、いつしかその少女は聖剣の姫と噂されるようになる。
ただ、聖剣の姫と呼ばれる彼女には、人には言えない裏の顔が出来ていた。
自分の家族を殺した者に復讐するために――。
*
先行短編の『憑依する聖剣』にて、聖剣と少女の出会いを書いています。よろしければ、そちらもお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054889561331