第4話 圧倒的存在


「あ? 魔王? ……くっ、ははははは!! 俺の死の呪いは効いてたみたいだなぁ。頭に当たっちまったか? この世界で、魔王にふさわしいのはあのお方のみだ。というか、同じ世界に魔王は二人も存在できねぇ。もう既に魔王は存在してる。2人目なんてあるはずがねぇんだよ」


 ふむ、まぁ当然の反応と言ったところか。俺が、封印された後、新たな魔王が誕生するのはごく自然だ。むしろ、もう一人魔王が増えるなど現代を生きる者からすれば笑い話。実際、俺は力の多くを失っている故に、魔王と呼ばれるには値せんのかも知れん。だが……。


「この際、貴様の信じる信じないは問題ではない。来るならこい。ちょうど、新しい体でリハビリがしたいところだった。ま、故に加減は間違えてしまうかもしれんが?」


「へぇ、さっきとは人格から違うってか。こりゃ、魔王ってのもワンチャンあるのかなァ……でもよぉ、テメェの世界なら魔王を殺したって別にとがめられねぇよなぁ!!!最上級魔法 <炎雷閃艇>」


  魔法は、ドーンと雷でも落ちたような音を鳴らし、光速を越えた速度でこちらに放たれる。

  

 しかし、なるほど。選ぶ魔法のセンスは中々の物と言える。今呼び出したのは特に良い。炎と雷の両種の性質を持つ光線魔法。本来、扱うには十分以上の詠唱を必要とするが、こいつには必要ない。何故なら、すでに完成してる物を呼び出しているからだ。実に生意気なものよ。


「だが、現代の衰退した魔法なぞ俺の時代の魔法に比べればぬるいと言わざるおえん。古代上級魔法<亜空生成>」



 使用したのは亜空間を強制的に出現させる魔法だ。

 先程、放った奴の魔法は真っ直ぐ俺の生み出した亜空間へと進みやがて吸い込まれ無力化されていった。




「……へぇ、今の防ぎ切るたぁ、只者じゃねぇな……なんなんだテメェは? まさかマジに魔王ってわけではねぇだろ?」



「何度も同じことを言わせるな人間風情が。俺は魔王……魔王サタニフォル。地獄でこの名を広めろ愚か者が」


  と、まぁここまで攻め入れば恐らくは……。




(ちっ、もしこいつの言う通り本当に魔王なら……やり合うのはリスクがデケェ。目的のガキどももいねぇ。それに、もしに匹敵するのだとしたら報告が必要だ。一旦引くかのが吉か……)



「……一旦、引いてやるよ。が、目的は変らねぇ。ガキ共も多分用済みになる。が、俺達の目的はかわらねぇ。俺達はいや、魔族は人間を必ず滅ぼすぜ」


  

  ほう、この人間……魔族側についているのか。いや、それよりもどうやら、魔族は人間を滅ぼす事をまだ諦めていなかったらしい。未だに、人間が平和に暮らしてるのを見て、とっくに諦めたものかと思っていたが……しかし、だとするならば情けない。人間を滅ぼす準備に人間の童共を捕まえるなど。おおよそ、何かの儀式の触媒に或いは童共の中に特異な何かがいたのかのどちらかだろう。実力はどうかは知らんが志は衰退化したとしか思えぬ。まぁ、総じて言うなれば、この上なく興が冷めたという事だ。


「そうか。引くなら、はよう引け。俺は敬意の払えぬ格下相手に話をするのは嫌いだ。ついうっかり、殺さぬうちにとく消えよ」


「ちっ……その程度でいい気になってんじゃねぇぞ! 俺なんざ、魔界の中では最弱に等しい。オメェが敵わなねぇような格上なんざゴロゴロいるぜ?」


 この小僧、中々笑いのセンスがあるではないか。当然の事をドヤ顔で言い放つとは! これには、俺も耐えられぬ。が、一つ勘違いをしているようだな。


「ふはははは。貴様が最弱など当たり前の事よ。その程度で、実力が上位ならば俺が今の魔族を一掃する所だ。それと、帰る前に覚えておけ。完全体となった俺よりも格上なぞ……この世界には存在せぬ」ギッ



「っっ!! はっ……言ってろよ自称魔王。まぁ、おまえも本当に魔王ってんなら、こっち側に付いてもいいんだぜ?」



「毛ほども興味がわかんな。今の魔族に用はない。俺は一からこの世界を手に入れる。今更、衰退した魔族の協力なぞ必要性を感じぬわ」



「そうかよ……じゃあな魔王様。次あったらそん時は最後まで殺し合おうぜ<空間移動>」

 

 捨て台詞を吐き、奴は空間転移でこの学校内から消えた。


「これで、邪魔者は消えた。後はこの肉体を利用し続け完全体に戻るのを待つの……ちっ、時間切れか。今の俺の魂では、こいつの体を使用しても現界できるのは15分と言ったところか」



まーーまぁーー良い。それも、俺を使用する回数につれてーー変わるーー現界時間もーー魔力もーー固有魔法もーーいずれーーな!!!





♦︎♢♦︎


ーーどれくらい時間が経ったのだろう。あの時、俺はルージュの学校で殺されたはずだ。が、気づくと俺は見知らぬベットで寝ていた。


「なんだよここ。見た感じ保健室っぽいが……多分、中等部じゃないな」


  恐らくだが、ここは高等部だ。中等部に比べて施設は豪華で大きい。ここは、明らかに中等部の保健室にしては広いし、設備も整っている。だが、だとしたらなぜ俺は高等部のベッドで寝ている? 謎だ。


ーーコンコン


  ドアをノックする音が聞こえた。誰だか知らないが俺は一応、返事をして入室の許可を出した。


「良かった、目を覚ましたようだね。ライヤ・ソウルくん。無事で何よりだよ」


 入室してきたのは、歳は二十代前半あたりかであろう好青年だった。妙に風格のあるオーラは、さながらトップに立つ人間の風格を感じさせた。一体何者なんだ? この人は。


「あ、あの、貴方は?」


「僕のは、ウィル・ディアス。魔法学院高等部の最高権力者にして一国の王さ」


なるほどーー魔法学院の最高権力者で一国の王か。なるほどなるほど……ん? 


「はへ?」



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相棒は魔王ですが何か問題でも? ラガーさん @ragasan0728

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