主人公は不幸ながらも、有能で才気あふれる人間であるのは間違いない。
ただ、少し怠け者というか「効率主義者」が行き過ぎて、「無駄な努力」というものを嫌悪しすぎただけ。
例えるなら「本当に有能なねらー」とでもいうべきか。
その主人公についていけなかった嫁や会社の上司により陥れられ(?)、不幸になるものの、不貞腐れて足を止めていた時期がありながらも、周囲の人との交流で30になって、また新たな人間関係を気付き、何かに目覚める物語。
玉石混交になりがちな(大抵石以下だが)、主人公視点の地の文の文章だが、主人公の思考が極めて論理的&ねらー的なユーモアにあふれる文章で読みやすく、また状況を把握しやすいため、まさに玉と言うべき文章になっている。
ストーリー、文章、キャラ。
全てにおいて高水準な良作。是非お勧めしたい。
もし、日本にダンジョンが湧いたら・・・とか、
俺にも偶然美少女有能JKとお近づきになれるチャンスが来れば・・・とか、
別にそんなもんなくてもちゃんと頑張る理由があるってわからせてくれるんですよ、このお話って。
もちろん主人公のウツミんはそもそも恵まれた出生、努力家で才能もあって、不運や理不尽で失ったものも多かったけど、それ以上のリカバリー(JKとか!JKとか!!)を得た上で成功したりこれからも頑張っちゃったりしてるわけですよ。
でもJKとお近づきになったこいつはですね、別にJKじゃなくても頑張ってたと思うんです。絶対やれば出来る子ですし、それだから頑張っちゃって、どんな理不尽があっても家族の助けとかなくてもちゃんとやれる子だと思うんですよ。
だからこのお話を全部読んだ方は、俺ウツミんじゃないからとかJKが近くにいないからとか思わずに頑張ったらいいと思うんです。
ウツミんみたいにカッコ良くなっていいと思うんですよ。
なんかそんな気持ちにさせてくれるいい話だったなあってのが感想です。
この作品は、ちまたではびこってる「頭空っぽで読める小説」と思いきや、結構ヘビーな内容を取り扱っています。主にヒューマンドラマ的な意味で。
もちろんタイトルの通り、主題はリストラされたサラリーマンがダンジョンで徐々に成功していく話なのですが、そこまでの過程がとてもしっかり書かれています。嫁の不倫、上司からのリストラ宣告、実家での親との会話、そのどれもが綿密に描かれていて、ドラマでも見てるかのようにそのシーンが想像できるのです。
こういった丁寧な描写は、ライトノベルでは冗長に感じることがありますが、心配ご無用です。この作品の文章はとても読みやすく、頭空っぽな私でもスルスルと読めました。
頭空っぽで読める作品群に食傷気味なあなた!
スッキリ完結しているので、是非!