第33話 おわりのおわり

 一弥は玲奈を乗せて舟を漕ぎ出した。

 すると島が迫ってくる。

 小さな桟橋がふたりを出迎えてくれた。

 上陸すると少し開けたところに出たが、奥が丘状になっていて、その上に社があった。

社の階段を上れば乗ってきた小舟がより小さく見えた。

「最期に確かめたい事があるって言っていたけど僕は何をすればいい?」

「最初にあった時を覚えている?」

「うん。僕らがこんな小さな時だ」

 一弥はそう手を腰の高さで動かした。

「そうそう。それくらいだったけ。その時に、一弥はあたしと結婚するって言ってたんだよ」

「僕、そんなこと言ったっけ?」

「ええ、言いました。確かにこの耳で聞きましたよ」

 一弥は耳まで紅くなった。

「だから、最初、顔を見せたのに」

「そうだったのか……」

「それに髪型まで変えてないのよ」

「うん。髪型は覚えている。綺麗な髪だったから」

「うむ。よろしい」

 玲奈は満足そうな顔をした。

「それで何を思いだしたの?」

「うん。その時ね。今度会うのは10年後だって言われていたから、もし覚えてなかったら

許してあげないって念じたの。それで、この前逢ったとき、最初解らなかったでしょ? 隠さなくても良いのよ」

「うん。綺麗だとは思ったけど、玲奈だとは解らなかった」

「それが、わたしには解ったみたい。正確にはわたしの本性かな。だから一弥の魂を半分頂いてしまったの」

「だから何もかも中途半端だったのか……それでどうすればいいの?」

「うん。目を閉じて」

「こ、こうかな」

 一弥は瞳を閉じると唇に何か柔らかいモノが当てられた。そこからあたたかいモノが吹き込まれてゆく。

 おどろいて眼を開けると、玲奈の瞳が見えた。一弥は咄嗟に眼を閉じてしまう。

あたたかいモノがふたりを包み込むとき、一弥の感覚は一切を無くした。

もう天も地もない。

 ただ、あたたかい空間に全身の感覚が溶け出していった。

 そして一弥はもっともあたたかいモノを見つけた。

 それは自分の前にあった。

 それは玲奈だった。

 抱き合う中に玲奈は僕の中に入ってきた。

 そして僕は玲奈と解け合った。


「どうだった?」

「うん。僕は昔、何処かに忘れてきた自分の片割れが見つけられた」

「うん。わたしも自分の片割れを見つけられた」

 そのまま抱き合うふたりに紅い斜めの光がいつまでも包んで離さなかった。


          了

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久遠のうつわ 鬼祓い師 雨宮玲奈 鷹野友紀 @takanoyuki

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