鋭敏で贅沢な短編集

一話一話が濃密で上質な文学作品だと思います。緻密な情景描写と静かながらもおどろおどろしく響いてくる心理描写の深さに、読むというよりも潜るような感覚に陥ります。その場の光景がしっかりと浮かび上がり、しかしどこか曖昧さも感じ、読み終えた後はそれこそ夢でも見ていたような、目が覚めたあとのような気になります。
どの作品もそれぞれの特徴を色濃く持ち、素晴らしい表現力とほの暗くも美しく生々しい言葉使いに、気付くと一気に読み進めてしまいます。文章量は多いでしょうが、まったく苦にならない引き込まれる内容です。個人的には『ヴォイドハート』と『愚者のロマンス』が特に好きです。
総毛立つようなこの物語に、是非浸ってみてください。

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