戦闘力のある銭湯? なにそれ、ずるい!!!

年々寂れていく銭湯稼業。銭湯屋の息子は跡を継がないと思っている。
彼には煙突の精が見えて言葉が分かる。他人には見えない。
それはなぜか……。

コンパクトな分量の中に、ぎっちり練り込まれた設定と次々に起こる事件。
絶妙にさし込まれる伏線。巧い。これは再読すると更に唸る。

銭湯の煙突に落雷?が起こることで、異世界に飛ばされる主人公と煙突の精。
家二軒分もある銭湯は騎士形態に変形する。巨大な煙突は砲身に。
移動時は煙突の精のなかに格納される。
もちろん銭湯にもなる。異世界では王様も入れない広々とした風呂に。

なにそれ、ずるい!(笑)

異世界で出会ったのは王の奪還作戦中の軍人。そして煙突掃除人の子供たち。
『王鳴』とは何か。主人公の抱えて来た本当の思いは。
そして王の奪還作戦は成功するのか。

意表を突かれる設定でグイグイと読ませてしまう。
構成が素晴らしく、セリフが生き生きとして臨場感があるからだ。
ぎっちり練り込まれ、しかしライトに仕上げている。(ここ重要)
そして最後にホロリとさせられる。再度言うが、巧い。伏線回収も鮮やか。

なにそれ、ずるい! は、本文にもあるが、私は作者に言おう。
「なにこれ、ずるいくらいに巧いっ!」
ライトな顔をした濃縮還元ジュース。
伏線を見落とさないように読み込んでほしい。
表の顔に騙されることのないように……。