余命一か月の彼が出会ったのは、美しい不老不死の人魚だった。

 何でこんな名作が埋もれてるんだ⁉ というのが第一の感想だった。それはもう、怒りにも悲しみにも似た感情だった。この物語は、美しい!
 余命宣告された主人公は、夏休みをどう過ごすか悩んでいた。やりたいこともない。何もかもが無意味に思える。そして再婚したばかりの父親や、母親になったばかりの「母親」に、この病気を告げられずにいた。ある日、図書館で同じ学校の女子生徒と会い、そこで池の中に人魚を見た。どうやら、女子生徒には人魚が見えないらしい。女子生徒と仲が深まる中、主人公は人魚がいる池に向かう。人魚の肉を食べると不老不死になれる。そんなことも聞いた。しかし、主人公は死ぬことを選んだ。
 コンビニの誘蛾灯で、バチバチと音を立てながら死んでいく蛾。
 遺書を書こうと用意した便箋とボールペン。
 夜中に人魚に会いに行っていることや、病院に通院している自分。
 図書館で女子生徒から借りた恋愛小説。
 それらを「両親」に問い詰められた時、「いい子」にしていた主人公は感情を爆発させる。反抗期だから反抗するなんて、嫌だった。だからせめて死ぬまで「いい子」でいたかったのに――。
 そして、知ってしまった人魚の正体。
 さらに、人魚をどれだけ自分が想っていたかということ。

 重い題材だが、重くなり過ぎず、終始テンポよく話が進んでいく。
 キャラクターが魅力的で、感情表現も豊かだった。
 本当に、これを読まないと損をしていると思う。

 是非、是非、御一読下さい!