Hall's crabapple-ハナカイドウ
「いらっしゃいませ〜!」
騒がしい居酒屋に澄んだ声が響く。
僕は去年からこの居酒屋で働いている。大学の友人に連れてこられたこの小さな居酒屋の店長に一目惚れしたのだ。それから一ヶ月も経たないうちにバイトとして雇ってもらえた。
臆病で
店長は二十代後半くらいで、とても美しい。真っ白な肌にはっきりとした目鼻立ち、長い黒髪を無造作にお団子にしてエプロンを着用している姿すらも美しい。
ただ美しいだけではない、その性格も素敵なのだ。
酔っ払った客同士で喧嘩が始まった時、
「喧嘩じゃお腹はいっぱいになりませんよ〜。はい!サービス、お腹が空いてちゃ気も立ちますからね」
笑顔で仲裁に入り、お互いの前に唐揚げの乗った皿を置く。さっきまで怒鳴ってた客も、彼女の笑顔と澄んだ声で静かになる。
彼女の温和な性格のおかげで、ここの居酒屋は常に平和だ。僕は精一杯彼女の力になろうと日々頑張って働いている。
ある日、閉店作業をして食器も全て洗い終え、ふと彼女の姿を探すと、カウンター席で売上の集計をしていた彼女が居眠りをしていた。夜遅くまで元気に働いていても、やはり疲れているのだろう。だがその疲れを感じさせない安らかな寝顔もまた美しく、僕はいつも起こすのを躊躇う。その柔らかな髪に、白い頬に、細い指に触れてみたい……そんな気持ちに駆られるが、そんな事を出来るはずもなく、優しく呼びかけて起こすのだ。
臆病で狡い僕は、これからも恋心を隠して彼女の美しさに見惚れるのだ。
花言葉〜温和・美人の眠り〜
花物語 古屋 瀧 @Taki_Furuya12
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