#47 (最終回)





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『あれから12年。

 私達の国は幾たびかの苦難を乗り越え、力強く前進してきました。

 私の父も、祖父も、曾祖父も、かつて北朝鮮と呼ばれた国を圧倒的な力で支配してきました。

 しかし21世紀のこの現代に、そんなひとりの力で国を統べることはあってはならないと私は信じています』


 朝鮮共和国のマークの入った演題を両手で掴んで、かの国の首相が演説をしている。音声は不愛想な同時通訳だが、首相の真に迫った表情で、状況の深刻さは伝わってくる。

 テレビ画面には「緊急生放送」の表示が出ていた。


『だから私は国家の主権を……』


 演説が続いている。





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 エリはワーカムを柏木との会話に戻した。

「ねぇ、そっちの首相の演説がやってるわ。なんだか深刻そうな顔をしてる」

「そうか。こっちではテレビは映らないんだ。本部に行けば衛星回線で見られるんだけどな」

「さっき、何を言いかけていたの?」





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『その輝かしい理想を最後まで受け入れられないかつての大韓民国の一部エリートが、私達の国のいしずえを砕こうと、この12年間、ずっと活動してきたことを私は存じております』





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「いや…改めて聞かれて答えられるものじゃないぜ」

「言ってよ」





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『私は今日、皆さんにひとつ大切な報告があります。かつて繁栄と堕落を誇った南朝鮮の首都・ソウルは、いまその反乱勢力の拠点となっております』





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「―――あんな風に、朝の光のなかで、誰かを抱いたのは何年ぶりだろう、って思ったんだ」

 ふふ、とエリは笑った。

「エッチね。これからは何度も、朝の光のなかでしましょう。あなたはもう、自由なのよ。午後のティータイムの前にもふたりでセックスしましょう。私ももう、自由になれた。薄暗い地下室でだって、できるわ。あなたがいてくれれば」

 柏木の苦笑顔。

 エリの一番好きな笑顔が見られた。





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『その中でも、反乱軍の拠点がある、ソウル・セントラル・ホテル。私はたったいま、そこへの最終攻撃を許可しました。』





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「そうだな。今度そっちへ帰ったら、ふたりで休暇をとって、どこか静かなところへ出かけよう。誰にも邪魔されない、おだやかな場所へ」

「素敵ね」

「行こうぜ、相棒。ずっと一緒だ」

 そう言って柏木は、もう一度笑顔を見せた。


 エリがテレビに目をやると、そこには空を飛ぶ映像が映っていた。視点はやがて下を向く。都市を上空からとらえた映像になった。それがグングン落下してゆくように見える。





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『私はもう、この内戦を終わらせたいのです』

 同時通訳者の抑揚のない声が、その映像にかぶさる。

『半島に平和をもたらすための、最後の鉄槌を、ここに下します。ご覧いただいているのは、巡航ミサイルのモニター映像です。国民の皆さんと共に、半島の混乱の最後を共有しましょう」





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 映像は、都市の中に立つ、高層ビルに吸い込まれてゆくように見える。

 そして、そのビル到達した瞬間、映像が途切れた。

 カメラはその瞬間、演台に立つ首相に切り替わった。


 エリのワーカムもその瞬間、映像が途切れ、回線が不通となった。

 エリは、真っ黒になった画面をいつまでも見つめていた。
















 <了>

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行こうぜ相棒 フカイ @fukai

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