第4話

もし、この状況にタイトルを付けるなら…出会いかもしれない?

そんな、偶然にもほどがあるような最初の出会い。



「えっと…はじめまして?」


俺はそう聞くと子は少し後退り怯えた表情をしていたが、紙とペンを取り出して震えたその手で書くと俺に見せてきた。

ただ、なんて書いてあるのかわからないのでどうにも返事が出来なかった。


「あー…ごめんね?なんかこの世界に来たばかりで字が読めなくてさ。んーっと…多分だけど俺のことを聞いたんだよね?」


聞くと少しびっくりしたような表情を浮かべるがまだ、誰かもわかってない状況で不安なのか小さく頷くだけだった。


「んー俺の名前は朱宮隆二って言って、まぁ勇者って知ってるかな?その勇者と同じ世界から来たんだ」


そう答えるとびっくりしたようで、少し近づいて来て観察するようにいろいろ見ていた。

なんか綺麗な子に見られるのは嫌ではないが、恥ずかしいな。


「えっと、君の名前は何て言うのかな?」


観察することに必死だったのか、驚いたようにびくっとすると突然おろおろし始めたのだ。

紙と取り出そうとしたがしまったり、何か方法はないのかな?っていう風に辺りを見渡したりしていた。


「もしかしてだけど、声が出なかったり?」


当たっていたのだろうか、目を大きく見開いたのだ。

なるほど、病気か何かかな?とりあえずこの子のことは少しわかったけど…さてどうしたものか。

すると慣れたのかどうなのかはわからないが、スーツの袖を掴んで首を傾げていた。

かわいいなんて思ってしまったが、何か困ったことがあったのかと聞いてるのだろうか?


「あーちょっと困ったことがあってね。勇者と離れちゃってどうしようかなって思ってたんだ」


そう答えると考えるようなそぶりを見せて悩んでいるが、どうにもわからないようでお辞儀をした。


「あぁ大丈夫、けどそうだなぁどうしよう…」


答えるとちょっと悩んだのか少女はまた袖口を引っ張り指をさして「ついて来て!」と言わんばかりに引っ張ってきたのだ。

俺は行く当てもないので言われるがまま引っ張られるがままに付いて行くことにしたのだった。



               一 休 み美女には逆らえんのです



連れられて少し歩くと、一つの部屋についたのだ。

最初に少女が入ると入ってどうぞ!というように手招きされた。

しかし、みんな待ってるしなぁと思ったが、少女が少し不安そうな表情をしたように見えたので、少し笑顔で返して「わかったよ」と答えるて部屋の中に入ると、そこにはたくさんの本と紙があった。


(いや、たくさん何て優しい言葉じゃないな、これは…)


まるで一つの図書館のようだった。


彼女はこれをすべて読んだのだろうか?たった一人で?それを怖く感じてしまった。

しかし、彼女の方は気にした様子はなく座って欲しいのだろうか、テーブルの近くまで椅子をもう一つ運んできたのだ。


「あー、ゆっくりしたいけど勇者達と合りゅ…あ、何でもないよ。気にしないでね!」


途中まで言いかけたが、落ち込んだような表情をしたので途中でやめた。


(この子の表情一つで動かされるとは、美人はずるい!ずるすぎる!)


見えないようにため息をつくと、見てないはずなのに彼女が首を傾げたように感じるのだった。



                一 休 憩一休憩はリアルで休憩するタイミングです


さて、彼女は一人で読書をし始めてしまった。

俺はと言えば、読むことが出来ないのでそんな彼女の様子を見るだけだったが、さすがにそろそろつらくなってくるものだ。

仕方がないので何かないかと周りを見てみると、目についたのは一冊の本だった。

試しに読んでみるがさっぱりだったわからなくて、一文を指でなぞりがらペラペラと眺めているだけだったがふと影が見えると目の前まで少女が近づいていた。

少女も突然の顔を上げられるとは思っていなかったのだろう。

驚いた表情で後ろに仰け反るように体ごと引っ込めると、勢いが付き過ぎたのか、後ろに椅子ごと倒れてしまったのだ。

咄嗟の出来事だったのですぐには体が動かなかったが、倒れた彼女に近づくと抱えてすぐそばにあるベッドまで運んだ。


とくに目立った外傷はなく、気絶してるようだったがさて、困ったなと彼女の額に手を差し伸べるとそこには髪に隠れて見えてなかったが、不思議な図形がのようなものがあった。

触れると何か嫌なモヤモヤ感があった。


(…消えないのかな?)


もしかしたら、王家に伝わる大事なものかもしれなかったが、触れてるだけで気持ち悪さも感じてきたので、ごめんなさいと心の中で謝罪をして指でそれをなぞるとそこには何もなく綺麗さっぱり消えていたのだ。


(お?うまくいったようだった)


一安心をしてもう一度額に指をなぞるが、不快感は特になかった。


すると気が付いたのだろうか?薄っすらと目を開くと、その瞬間にばっと跳ね起きて体中を触るが特に問題はなかったようで胸をなでおろしていた。


「気が付いたようだね。よかったよかった…ごめんね?俺が急に顔を上げたせいで…」


そこまで言うと彼女はあわてたように首を横に振り一頻り終わると、頭を下げてきた。

俺も俺で頭を下げて互いに謝りあったが、ふと彼女のほうが少しにこやかになったと思うと、俺もそれにつられて笑顔になってしまった。


(なんだろう、楽しい?のかな)


久しぶりに味わった感覚に少しの照れくささを感じたが、そういえばと思い俺はまた頭を下げたのだった。


「そういえば、ごめんね?額に合った気味の悪いものがあって、それを『消しちゃった』んだ大事なものだったら…そのどうしようかなと思ったんだけど…」


そう言うと彼女は固まり何やら震えだしたのだ。

えっやっぱりまずいものだったのか?!と思うと彼女の瞳から涙が出てきてやはり大事なものだったようだ。


「ご、ごめんね!そんなに大事なものだったんだ。ど、どうしうっ!」


俺はあわてて謝罪すると、彼女が急に抱き着いてきたのだ。

何事かと思い戸惑うが湿る肩が彼女が泣いてるんだ!ということを伝えてきて、どうすることもできずにただただこの状況を受け入れて「大丈夫だから大丈夫」としか声をかけることが出来なかった。

すると、ノックする音が聞こえたが、どうにも動くことが出来ないのでどうにか釈明することが叶うのだろうかと思った。


「失礼しますアリシアさ…ま?!はわわわわ!!!」


「あ、あの!これはですねってちょっと待って!!!」


メイドさんは何を思ったのか持ってきた食器を落として走って行ってしまった。


(あぁ嫌なことが起きそうだなぁ)


メイドの声も聞こえてないのか泣き続けるこの子をさて、どうしたものか…と考えつつ言い訳の文も頭の中で考えるのであった。

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どうやら異世界は平和らしいです? akisan @akisan1234

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