第3話
そうだな、今の状況を一言でいうなら…迷子というやつなんだろう。
城の庭にあったベンチに腰かけて茜色に染まりつつある空を見て一息つくのだった。
数 刻 前
俺と3人はリリアーナと共に言われるがまま初めて乗る馬車で、城へと向かっていた。
それほど遠くではないが、はっきりと見えるその城は悠然とした姿でそこにあった。
映画とかで見る城なんかとは比べようがなく、立派なその姿に目を奪われていた。
「いかがですか?アケミヤ様この大陸一と謳われる。我が国の城は?」
「あぁすごいな…」
口から出た言葉がそれだけしか出ない自分もそうだが、表現のしようがなかったのだ。
何百年もかけ作られたと言うその城は、この国に初めて訪れた人々の心を掴みこの地に繁栄を築いてきたそうだ。
「『この城なくして人は無し、人なくして城は無し』歴代の王達はそれを幼い頃より教わり守り続け、住む人々もそれを親から子へそして子からまた新しい命へと語り継ぎ城のため、国のために尽力してくださいました」
そして、一呼吸入れて。
「人と城これは私達にとっての宝であり最も大事にするべきものなのです」
そう語るとリリアーナの瞳には街が、人々が映り込みしっかりとした眼差しで訴えてきた。
(いい国だ)
それを聞くと、突然として起きたこの状況だったが、いまは不安感よりも安心感のほうが強かった。
他の3人も嬉しそうな表情を浮かべてそして照れるような仕草をしていた。
つまり、そう言うことなんだろうと思うとこの後聞かされることも大きくは間違うことはないのだろう。
そんなこと思いつつゆっくり馬車は城へと向かうのだった。
大きな門を潜り、城入り口に近づくと鎧を見にまとった人々とメイドさん達がいて、出迎えの準備をしてたのだ。
一人のご老人が馬車の扉を開けてくれると、扉の横に逸れる。
「おかえりなさいませ姫様、勇者様…そして…?」
「爺、こちらの方はアケミヤリュウジ様です。この事は直ぐにお父様と交えてお話ししたいのですが、いまは勇者様と同じく対応を」
そう言うと佇まいを正すと
「申し訳ございませんでした。アケミヤ様、わたくしはこの城で仕えさせていただいております。名をバルドと申します以後おみしりお気を…しかし、お嬢様?そうなると準備のほどがまだできておりませんので、しばらくお待ち頂く形になってしまいます」
「いいのよ、私も今の現状に関しては少し混乱しているところはあるのよ…」
そういうとリリアーナは少し疲れた表情を浮かべて顔を少し伏せるのだった。
バルドさんは察したのかそれ以上聞かずにすぐさま支持を出して準備のために向かった。
リリアーナの話によると、国王がまだ執務から出てこれない状態?らしく。しばらくは大きい部屋で待つことになった。
一人のメイドに案内をさせてリリアーナは少し着替えてくるということだったので少しの間離れることになった。
そんなこともあり、案内人のメイドに付いて歩くとさすがだなと思った。
高級品なんだろうとわかるような美術品や壁の造形が、歩く先々にあった。
詳しくはわからないがこれ一つで何十万とかするんだろうなと、妄想してしまう。
少し歩いたが、案内人に付いて行く3人は歩きなれてるのか特に気にせずに歩いてるが、しかし今に至るまでにも少し歩いていて目を離すと迷子になってしまいそうだった。
そんなことを思ってまた少しすると中庭が見えてきて立派な噴水と彩り豊かな草木が咲き誇っていた。
ふと、噴水近くに読書をしている子が見えた。
リリアーナと似て金色に長く整えられた髪、少ししか見えなかったが青みを帯びたその瞳と透明で透き通った肌はまるでお人形のような……すると、こちらに気づいたのかはわからないが、顔を向けたのだ。
さすがに凝視していたのはまずかったと思い顔を背けて何事もなかったように歩いた。
(ふぅーこれで一安し…ん?あれ?)
先ほどまで、目の前にいた3人と案内人の姿がなかったのだ。
嫌なほど汗をかくのを背中で感じて、周囲を見渡すが誰もおらずまずいなぁと思ったが、そういえば噴水に居た子に話を少し聞けば?と思い覗き込むとそこには姿がなく、移動したようだった。
(まずいまずいまずいまずい!?)
とにかく焦らず落ち着いて待とうと思ったが、一階にメイドさんが歩く姿見えて声をかけるがどういうことか声が聞こえてないのかわからないがそのまま過ぎ去ってしまったのだ。
(と、とにかくどうにかしないと?!)
その場で待てばよかったのだろうが、焦った気持ちで見知らぬ土地に居たこともありその場を移動してしまったのが最後だった。
そして冒頭に戻り目立っていてわかりやすいだろうと思った噴水の前まで移動したのだった。
「悪いことをしたなぁ…みんな今頃探してるんだろうな…」
そんなことをつぶやいても誰も返事をすることはなく、空しさだけ心に広がるのだった。
はぁ…とため息をつくと一冊の本が落ちていた。
字は読めないが何やら物語のようだった。
さっき居た子が落としたのかな?と思っていると、ふと誰かが近づく音が聞こえてその方を向くとさっき見かけた子が困った表情でこちらを見ていたのだった。
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