雨百合村の祟り

@tsubakihyuga

第1話雨百合村

夏。日差しが強い7月のこと、僕は車の助手席に座り鋪装されていない小道をガタガタと揺れながら小さな村を見ていた。


盆地の中にある小さな村。近くには大きな川が流れており縁で小学生くらいの子供達が遊んでいるのが見える。

その奥には田んぼが広がっておりのどかな光景が広がっている。


そんな小さな村に中学一年生の夏、今日から僕たちは住むことになった。


「なあ信一、ここが今日から住む雨百合村だ」


佐藤信一、それが僕の名前。この村が雨百合村。そして車を運転しているのが父親の佐藤友広だ。


「ねえ、父さん。なんでこんな村に引っ越すんの?」


僕は疑問に思ったことを父さんに訊く。

この質問は僕がこの村を見たときに思ったことだ。そもそもなんでこの時期なのだろうか?


今は七月、引っ越すなら普通は三月辺りになるだろう。

今の時期に引っ越すのはなにか理由があるのかもしれない。


「…あまり話したくなかったんだけどな、ほっといてもいつか耳に入るか」


父さんは少し考えたあと、しょうがないかというような感じでここに来た経緯を話し始める。


「実は現場で事故が起きちまってな。その事故で死人が出て、代わりに俺が行くことになったんだよ。多分二、三年はこの村で過ごすことになると思う」


さらっと事故で死者が出たことを言われて俺はどう言葉を返せばいいかわからずに黙ってしまう。


そのまま新居に着くまで僕たちの間に会話は無かった。


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