古い神殿へとたどり着いた負傷兵フィルに対し、彼を介抱してくれたクオと名乗る老人が、かつてこの神殿で何が起こったのかを語る形で物語が進んでいく本作。
戦争に支配され文明が二の次となってしまった近未来において、クオとベルン、二人の少年を中心に物語が描かれていきますが、待ち受ける運命は辛いものです。世が世なら、幸せな未来もあっただろうにと思わずはいられません。
回想に登場する兵士の不気味さもとても印象に残っています。
どことなくファンタジーを感じさせる世界観において、兵士は文字通り機械的。近未来的要素とファンタジー要素の共生が、戦争に支配され文明が二の次となってしまった近未来を如実に表していると思います。
恐ろしくもあり、同時に物語として魅力的でもある世界観です。
終盤で希望が見えたことは救いでした。
彼の行動によって今後世界がどれだけ変わるかは分かりませんが、語られた過去によって新たな未来を拓ける可能性が生まれた。素晴らしいことだと思います。
とても考えさせられる作品です。
是非ご一読を。
傷ついた兵士フィルはとある神殿に偶然逃げ込み、そこに居たクオという老人の話を聞くことに。
まず、余計な登場人物が一人も出てきません。
話の聞き手であるフィル。
神殿で保護されるベルン。
ベルンの先輩で世話係になるクオ。
子供たちの保護者ターラ。
彼らが中心となり物語は進んでいきます。
異世界ファンタジーですが、荒唐無稽ではありません。
派手な魔法や剣技、奥義で敵をやっつけるシーンは皆無。
この世界の醜さの描き方が読む人の心に迫ってきます。
最終話にこの物語のテーマが濃縮されているように感じました。
長さも手頃で読みやすいので、ぜひ最後までお読みください。
世の中、捨ててもんじゃないと思うことでしょう。