第6話

そして医師から妊娠していることを告げられたのです。


父も母も夫も、兄も弟も大喜びでした。


もちろん私も。


そして半年ほど経ったある日、私は再び夢を見ました。


そこには前に見た夢と同じく、若い父が私の前にいました。


前回と同じ、と言うよりも前に見た夢の続きなのでしょうか、


父が私に向かってまだ怒鳴り続けていました。


すると不意に父が、私の身体を両手で強く押しました。


相変わらず感触も音もありませんが、見える景色から判断して、私はそのまま床に押し倒されたようです。


風景が激しく動いた後、目には天井が写っていましたが、やがて私を見下ろす父の姿が見えました。


そして父は私の上に馬乗りになったのです。


そこで目が覚めました。


――……。


時計を見ると前と同じく午前二時でした。



その日の午後、激しい陣痛に見舞われた私は病院に担ぎ込まれ、そのまま赤子を出産しました。


少し早産でしたが、生まれたのは元気な女の子でした。


兄も弟もまだ独身だったので、父や母にとっては初孫になります。


父は仕事場から作業着のまま病院に駆けつけてきました。


その全身で喜びを表現しながら。


しかし私が抱いている赤子を一目見た途端、その表情が一変しました。


私は産着の一部をわざとずらしていました。


何故なら赤子の左肩には、私と全く同じ痣があったのです。


私はあえてそれを父に見せたのでした。


父はその動きを完全に止めて、目を限界まで大きく見開いて赤子の、赤子の左肩を見つめていましたが、やがて力なく肩を落とすと、背を向け何も語らないまま病室を出て行きました。


次の日、父の姿が見えなくなったと私の元に連絡が入りました。


家族で、そして警察の力も借りて探しましたところ、父が見つかりました。


父は家の近くにある小高い山の中で、首を吊っていたのです。



            終

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ツヨシ @kunkunkonkon

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