転生？　いいえ悪霊です

　――吾輩は悪霊である。名前はもうない。

　交通事故多発地帯にて、自分が何者であるかも失くしてしまうほど地縛霊の日々を満喫していた何某はある日、転生トラックで出荷される高校生の魂に巻き込まれて異世界に漂流してしまう。
　地脈から切断され、消滅の危機を免れるためには、目についた死にかけの子供の肉体を乗っ取るしか残された手はなかった。

　――悪の自覚も、自負もあった。しかしそうと気づかれずに相手のすべてを奪い取るのはもはや悪にあらず、外道である。

　他の誰が知らずとも、悪霊は自らをそう断じた。
　これはそんな悪霊が、とくに更生するでも善行を積むでもなく紡ぐ物語の軌跡。