第4話 真実
ゆみなは俺に六歳に起こった悲惨な出来事を語った。ゆみなには三歳離れている俺より一個下の弟がいたらしい両親が出掛けていて二人で家の留守番をしていた時に事件が起こった。近所で仲のいい三十八歳のおじさんがいたらしく、留守番している時に訪ねてきたそうだ。知っているおじさんという事で簡単に家の中に入れた。家に入るとおじさんは豹変したという、ゆみなと弟の顔を何回も拳で殴りつけたという。殴り終わるとゆみなだけを車に放り込み拉致したそうだ。
ゆみなは背後の後部座席に乗せられて横たわっていたそうだ。目の前にボールペンがあり
ゆみなは勇気を出して後ろからおじさんの首に力一杯刺した。おじさんは苦しみ車のハンドルから手を離した途端歩いていたお婆さんの方に車曲がり跳ねてしまったそうだ。この事件で二人が亡くなった。おじさんは出欠多量でお婆さんを即死だった。事件は発覚しゆみなに罪はないとなったが、親は気が気じゃないだろう自分の娘が人を殺すなんてしかも一人は殺そうとして殺したのだ。ゆみなの親は正気でなくなりその事件以来ゆみなを陰で赤鬼と呼ぶようになりすぐに孤児院に捨てられたそうだ。
この話をごめんなさいと何回も謝りながら話された。この謝罪はきっと親や弟、おじさん、お婆さんに向けられたものだと感じとった。
話終わったら「聞いてくれてありがとう少し楽になった気がする疲れたし少し寝るね」と言ってソファーで横になって寝てしまった。ゆみなの寝顔は少し落ち着いていた気がした。
でも犯人の動機はなんだったんだ?
誰かに頼まれたのか、それとも性的な目的で拉致をしたのか、でも六歳を性的な目で見るなんてあまり考えたくはないな。
まぁ今は深く考えるのはやめよう。
ゆみなが起きたらお腹空くだろうし今のうちにスーパーでお弁当買いに行ってくるか。
俺は財布を持ち靴を履き家を出た、家の前にはゆみなが乗ってきた青色の自転車が置いてあった。家から徒歩五分に大型スーパーがある。スーパーで半額の焼肉弁当を二つ購入して家に向かった。
誰かと一緒にご飯なんていつぶりだろうか。
危ない危ない、家でこんなこと考えたらまたあいつの事だから馬鹿にしてくる、気をつけておこう。
俺は家に着き、靴を脱いでリビングに向かった。俺は持っていた弁当を床に落とした。
「どうなってんだ、何が起きた」
俺は目の前の光景が幻にも見えた。
家の中が荒らされていたのだ。机には手紙が置いてあった。『金になりそうな物は貰っていくわさよなら』と書き殴りで書いてあった。
冷静になろうと心を落ち着かせた。ひとまず状況判断から始めよう。盗まれた物は家が散乱していて分からなかった。でもゆみなは昨日、自殺しようとしてたんだぞ何かを盗んで裏切るなんてありえないだろ、決定的なのはゆみなの自転車がまだ家の外に置いてあったのだ。俺は目を閉じて何が起きたかを想像した。
考えられるのは誰かが家に侵入してここでゆみなと争いになり、ゆみなが抵抗したが何らかの形で気を失い連れていかれた。犯人は俺に拉致させたと気づかせない為に、ゆみなが書いたと思わせる手紙を残し部屋を荒らしてゆみなが何かを盗んで裏切ったと思わせた。こんなところか。俺がスーパーから帰ってくるのに一五分その間に事件が起きた。
でも誰に拉致されたんだ?そして犯人はなぜ俺の家にゆみながいると分かった?動機はなんだ?わからない、もっとよく深く考えろもっとだ。
俺の頭にゆみなが監禁されて弄ばれている場面が頭にちらついては消えを繰り返した。
俺はテーブルに両手をついて目を閉じた。
考えろ誰に拐われたんだ、孤児院の奴か違う
ゆみなを連れ去ってなんのメリットがある。
今もゆみなは怖い思いしてる。誰だ考えろ。
もう誰も失いたくない。
「考えろ、考えろ、考えろ、考えろ、集中しろ」
俺は手紙を書いたであろうボールペンで
自分の左手の手の甲を思いっきり刺した。
猛烈な痛みが俺を襲った。
「クソ、クソ、クソ」
俺は刺したボールペンを机に叩きつけた。
ボールペンをよく見ると病院名が書いてあった。
「 これはまさか、そういうことだったのか」
だったら一四年前の事件もそうか。大事な事を見落としていた。きっとゆみなを襲ったおじさんはゆみなと遊んで気が付いたんだ、木更津ゆみなという子供が人の心が聞こえる能力を持っていると。そしてゆみなを拉致してどこかに売ろうとした。納得がいく、ゆみなの能力を知っているのは、俺とおじさんと医者だ。きっとこのボールペンに書いてある病院で働いてるゆみなの能力を知っている医者が犯人だ。しかも計画的だな、ゆみなが孤児院を出て一人になるのを待ったんだ。なのに俺という男が出てきたせいで焦ったんだろ。
だから関係が深くなる前に拐った。
位置は、ゆみなの私物に発信機でもつけていたんだろう。
俺はボールペンとテーブルの上にあったゆみなの自転車の鍵を取り、玄関で靴を履き家を急いで飛び出しゆみなの自転車にまたがった。
ひとまず病院に行き医者の住所を聞き出そう。
「ふざけるなよ、俺は過ちを繰り返さない」
自転車に乗りながら時計みた、午後十二時二十一分を針が差していた。拐われて三十分近くが経とうとしていた。病院までは自転車で二十分はかかる距離だ。俺は腕時計を見るたびに漕ぐ速さが増した。
はやく、もっとはやく、病院にいかねーと失いたくない。
病院まで二十分かかる距離を一五分で着いた。この病院は街で一番大きいので地図を見なくても知っていた。外観は綺麗だが中は少し汚い病院だ。俺は自転車を入り口に止めて
すぐに受け付けに向かった。
受け付けの女性は汗だくの俺に驚いていた。
「ご用件はなんでしょう」
ビックリした顔をしながらマニュアルどうりの対応をしてきた。
(まずい何も考えてなかった、どうする
一旦離れるか、ダメだ怪しまれてしまう、そうなったら何も聞き出せない考えろ)
俺は受け付けの女性が喋った零.五秒と顔の汗を拭くふりをして稼いだ、一.五秒合計二秒で頭をフル回転させ、一〇通り考えた中から最高の一つを答えた。
「あの、木更津ゆみなの弟なんですけど
ゆみなの担当した先生ってなんて名前でしたっけ」
俺は冷静にゆっくりと話した。
「少々お待ちください。今調べますね。
高井 誠先生ですね。今日はお休みしているみたいなんですけど、どうされますか」
(確定だな。高井 誠許さねぇ)
俺は今にも湧き上がる怒りの感情を拳丸めて抑え込んだ。
「今日いないのは知ってます。だって高井先生、僕のおねーちゃんに手を出しちゃって
今、高井先生のお家で弁護士と話してるんです。僕つまんなくて、抜けて出てきてしまって迷ってしまったんです。僕忘れっぽくて先生の名前も忘れちゃって、ずっと走り回って先生の家探してたら汗かいちゃって、でも病院あったからもしかして知ってるかもって、良かったーもう話し合いは終わって僕の事探してると思うんです」
「俺は少し幼い感じっぽい口調で話した」
そうする事によって頼りなさそうに見えるからである。
受け付けの女性は苦笑いをしていた、医者が患者に手を出して弁護士まで出てきて泥沼展開なのだから女性が引くのも無理はない。
「では高井先生にお電話しますね」
「あの住所教えてくれたらタクシーで行くので大丈夫です。高井先生とは今すごい微妙な関係なのであまり迷惑かけたくないんです」
受け付け女性は納得した顔をして住所を紙に書いて教えてくれた。
紙を貰うと急いで病院を出て自転車に乗った。
こっからあまり離れてないな三十分くらいで着くか。走りながらメモの住所を携帯で調べ地図を暗記した。
あと少しだ待っていてくれ。
半間 花咲 豪 @taiga2
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