第4話 ボクは訳ありコスプレイヤー

 「準備オッケーイ」ミクちゃん気分で目一杯高いアニメ声で辺りの人にアピール、もう完璧に変態だ。


 早速カメラ小僧が集まってパチパチ映される(気分的には写して貰ってる)。

 手を振ったり笑顔でピース。


「どこから来たの」と野太い声を掛けられた、でも会場内では危険はない、(中学生男子に押さえ付けられても逃げ出せる自信がないけど)余裕で、

「惑星アリマ」と答える。

「アリアじゃないの?」


 アリアというのはボーカロイド歌手のIA《イア》、ONE《オネ》姉妹(厳密にはONEはボーカロイド仲間ではない)の出身地が惑星ARIAでそこに住む精霊と設定されている。


「アリマだよ」笑顔で手を振ってこれまた純白の日傘を広げて歩き出す。

 腕にはイブニング・グローブ(白くて肘まである手袋)装着済み。


 行き交う大勢の人の何人かが振り返る、ここではコスプレイヤーは当たり前、十人いれば二人三人はコスプレって感じなのでコスプレで歩いていても普通は振り返ったりする人は少ない。

 それが気持ちよくて止められない、どんどん深みにはまっていく。


 会場内を優雅に回る、何回も「一緒に写真いいですか?」と圧倒的に男性陣から声を掛けられる、両側に女性の場合もある。

 時折「名前教えて」なんて聞かれるが、

「ステージに立つ予定なのでその時にね」と返しておく。


 その場しのぎではない。

 今日の一番の目的は「街のど自慢」に出演、プロじゃないので抽選で選ばれないと出してもらえないが、出る気は十分。


 <いちおうp>の名前も売り込みたい。

 <いちおうp>とは僕がニタ動にアップしている曲のプロデューサーという意味の名前。もちろんウーチューブにもプロフィールは女性だ。


 完璧オタクの僕は家に籠って作曲、打ち込み(ボーカロイドに歌わせる作業、伴奏も)をやってる時もある、知名度はまだまだ低いのでこんな時にはアピールが必要なんだ。


 知名度が低いと言っても熱烈なファンレターメールを頂く時もある、万一こんな所で大勢に囲まれたらと密かに心配もしている、それ以上に「へっ」とか「なにそれ」と笑われる心配の方が勝ってはいるが。


 そうやって歩いていたら何かが目に入った「ん?」

 一人のコスプレイヤー、アーミー(戦闘服)スタイルだが胸を大きく開いて短パンいやスカートだった座ったら白いの見えちゃってるし、きわどいどころじゃない。

 僕が惹かれるタイプじゃない、むしろ嫌っているタイプ。

 だけどあの雰囲気どこかで見た。。。


 気になったのだけど<気になんてしてないから>という感じでゆっくり近づいてみる。

 ますます似ている、「ただの空似でありますように」願いつつ歩を進める。

 いつからか睨むようにいや睨んでいた、世に中に三人いると言うそっくりさんであってくれとの願いも打ち砕かれそうになった時その声が聞こえた。


「やめな!」

決してドスが効いてる訳ではないが、僕を十分に振るい上がらせる声、

(あの声は!、、、間違いない。)

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