第5話 鬼軍曹ってもしかしてアレ。
踵を返して立ち去りたかった。
がなぜか足が勝手にそこに向かってシャカシャカ動いた。
ああ悲しきかな奴隷体質、ご主人様のピンチに駆け付けてしまう。
「ご主人様どうなさいましたか」なんて言葉が飛び出しそうなのをぐっとこらえる。
「軍曹先輩!お、お祭りでございます、穏便に穏便に」
「はあ、だれだ貴様?」
「えっと妹さまがお倒れになりました、こちらでございます、さっこちらに」
とその人の手を引っ張る。
「ちょっと、何!離しなさい!」
先輩にそう言われると震え上がるが小さな声で、
「キスミー」と呼びかける(ああ神様我をお護りください)、キリスト教徒でもないが神に祈る。
「キスミー」と言ってもキスをせがんでいる訳ではない、
「キスミー」でピンときたのか「どうしたの?」急に口調が変わった。
「妹さんが熱中症の様です」
「どこ?」
「こちらです」
手を引き今来た方に向かう。
手を引いていたはずが反対に引っ張られていた、会場の外側の方へ。
木の陰に廻ると突然胸倉を掴まれ「何者、名を名乗れ」
と締め上げられる。
「来住み先輩ボクです」ほとんど金切り声。
「はあ僕なんて奴は知らないな、身ぐるみ剥いで鞭でシバくぞ」
思わず「お願い」なんて言いそうになるマゾっ子僕。
「いちおうpと申します」
「へっ、ななんだって」
「いちおうpと」
「嘘じゃないだろうな、嘘だったら素っ裸にして晒し者にするぞ」
「ま間違いありません」
「申し訳ない、気が立っていたものでつい、いちおうp様とはつゆ知らずご無礼を致した」
どこまでも軍曹な人だ。
「なぜ私の名をご存知で」
(僕だっていちおうpをなぜ知っているのか不思議だ)
「
「なんともしかして一葉の姉様でございましょうか」
「ま、まあそんな所でございます」
ってほとんど毎日顔を合わせているのに分からないなんて、この人どこに目がついてんだか。
「なんと可愛らしい姉様だ、しかも私の愛するいちおうpであられるとは、あいつめ黙っておったな、帰ったらケツ百叩きだ、おっと失礼冗談ですから」
「いえ平手で叩けば喜ぶでしょう」
「はあ?喜ぶ?」
「い、いえじょ冗談でおほほほほ」
(まんざら冗談でもないけど)
「面白いお方だ、ぜひお付き合いをお願いしたい」
「おつきあい?」
(こやつ僕にはさんざんな目に合わせておいて、もしかしてユリとかって方の人?)
「あっいや、弟殿とも仲良くやっておりますから家族ぐるみのい付き合いと言うことで」顔を真っ赤にしてひどく動揺している。
(まじあぶねー!人の事は言えないが)
こんな事があり僕は鬼軍曹の弱みを握った訳だ。(いや握られた気もする)
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