『九十九 千尋』を訪ねるって正気かい?
九十九 千尋
わー! 読者さん、いらしゃーい!
「ようこそ、おいで下さいました」
カクヨム公式キャラクターである二人、カタリィ・ノベルとリンドバーグは、真っ白な空間に居た。
目の前には、紫の洋服にコルセットを付けた、黒髪の長い女性。
「私は、
カタリィ・ノベル、通称カタリは、頭を下げて挨拶をする。
「あ、丁寧に、ありがとうございます……えーっと、何て呼べばいいでしょ? 九十九さんとは、別?」
女性は頷いて言う。
「そうですね……では、コンプレックス、とでも、お呼びください」
「コンプレックスさん。なんか、すごい名前」
カタリの傍にいたリンドバーグという女性、通称バーグさんという女性型AIはコンプレックスを見て言う。
「コンプレックス……え? 九十九さんって、コンプレックスさんと共通点皆無ですよね? なのに、
コンプレックスはくすりと笑って、真っ白な空間をしずしずと歩いていく。
二人はコンプレックスについて歩いていく。
し
ず
し
ず
ひ
た
り
ひ
た
り
ひ
た
た
り
り
り
「九十九は、悩んでおります」
コンプレックスは真っ白な空間で切り出した。
バーグさんがそれに対して質問する。
「お悩みですか? それは私になんとかできることでしょうか? 私は皆さんのサポートAIですから、頼っていただけると助かります」
コンプレックスは脚を止める。
「いえ……むしろ、あなたたちのキャラクターが上手く掴めない、という点ででしょうか? とはいえ、それはもうこうして
コンプレックスはまた、ゆっくりと歩き始める。
「おそらく、あなたたち二人は他の作家様の頭の中にも現れることでしょう。そして、その作家様の活動に合わせた内容のような、そんな作品を、その問題を、さも当然の様に解決されることでしょう」
「まぁ、そうですね。逆に言うとそれは、自由に書いて良いってことでもあるんですよ」
「九十九は、それでは嫌だと考えるタイプなのです」
コンプレックスは脚を止める。
「ここです」
真っ白な空間、そこに、ドアノブがある。
バーグさんの言葉を半ば無視するように、コンプレックスは言う。
「この先に……私と似たようなのが居ります。話を聞いてみてください」
カタリとバーグさんはお互いに向き合った後、カアリが空間にあるドアノブに手をかけた。
その時、 ね れ
真っ白な空間は じ て ――
気が付くと、そこは小さな、とても小さな、お手洗いだった。
便所。トイレ。洋式便器。
そこに座る、白骨。
「やあ、えーっと、リンド……リンドバーグさん?」
「いや、混ざってる。僕とバーグさんが混ざってる」
「私、苗字になってますね。どこかに居そうな御名前です」
白骨は カタ カタ と音を立てて喋る。
「骸骨が喋るのに動じないとは……」
「いろんな作品を見てきてるからね」
「それぐらいでは動じませんよ、私たち」
白骨は頭を抱えながら、トイレに座りながら言う。
「じゃあ、唐突で申しわけないんだが、恋愛物が苦手なんだ。実は」
カタリが白骨の言葉に返す。
「ん? それが悩みなの?」
「そう。いや、どうだろうな……あるいは、夢を見ているのかもしれない」
「……君を視ても良い?」
「おや、ここでは君はプライバシーを尊重するのだね。いいとも」
バーグさんはその様子を見て呟いた。
「おトイレの中を覗く時点で、プライバシーはないと思いますけど……」
「いいの! そこは! 僕も罪悪感出てくるし恥ずかしいでしょ!」
カタリは赤面しながらバーグさんの無意識の茶々に返しながら、その左目で視る。
直後、白骨は言った。
「見て、心を病まないようにな」
人は、心は、どこに惚れるのか。
頭か 男 女
顔か アクセサリー 飯
肩 肩 服 衣 装 衣 服 食 喰 貪 喰 食
心か 財産 お金 貯蓄 資産 富 自慢 世間体 甘え 母性
アッシー ATM 支配 欲望
手 手 仮彼 間男 二人目 浮気
ああ、性欲か 子 供 恐 れ
足 足 元 カ レ 忘れたモノ
あれ?
人間は、もっと愛に溢れている者では?
愛はどこだ。 愛をくれ! 愛だ! 愛はどこだ!!
ベルフェゴールは思った。
人は、人間は愛を知っているのか。神に愛された存在じゃないのか。愛を知る生き物であるはずだ!
だがどうだ。人間は……嗚呼、人間は……!
神よ! 悪魔でもわかるぞ! 人間は、人間で真実の愛を知るものは一部しかいないぞ、なぜこのような仕打ちをした!!
リアリティを求めれば、ロマンスは息の根が止まり。
ロマンスを求めれば、リアリティは飛び去ってしまう。
ま
うえ ぶた
めじり 瞳 めがしら
した ぶた
ま
涙
どんなに見ても、目に写る光景は変わらない無常を知っては、世界はモノトーンだ。
涙
なんだ
「九十九はね、夢を見過ぎてしまっているんだ」
白骨はそう言った。
「そのくせ、リアリストであると……うん……解った」
カタリは淡々と、見たことをバーグさんにも伝える。
「あー……九十九さん、恋人居ないんですね」
「バーグさん!?」
「いえ、世間を知らないのだろうな、と。それでいて、書物やなんかの間でだけ知ってるんだろうな、と……」
カタリの焦った表情を見て、バーグさんの表情がサーっと変わっていく。
「あっ! ああっ! その、いえ、すみません!」
白骨は笑いながら言う。
「いやいや、良いよ。大丈夫。うん。ちょっと光明は見えた気がするよ」
そう言いながら、白骨は吹き出し、膝を叩いて笑う。
コンプレックスが言う。
「では、笑いのツボに入ったアレは置いておいて、次へ行きましょう」
真っ白 な
空間を
歩い
て
そこは
「着きました」「ここはやけに狭いですね」大きさにしておよそ畳半畳ほどの空間にカタリとバーグさんとコンプレックスがギッチリと詰まっている。「こ、この空間……息が、しにくいです……」二人の女性に挟まれたカタリが複数の意味で圧迫されており教育上よろしくない空間である。「ここは何があるんですか? コンプレックスさん」「そうですね、そろそろだと思う
の
で
す
」
気が付けば、三人は落ちていた。
「え!? ちょ、落ちてませんか!!」
バーグさんがコンプレックスに言う。
コンプレックスは淡々と答える。
「圧迫からの解放、フラストレーションの開放が良いと聞いた九十九が悩んだ結果がああなったようです」
「物理的すぎませんか!?」
「執筆の先に詰まるとか、よくあることなのでは?」
「それでも物理的に詰まるとか意味が違いますよ!」
そこに、逆さまのまま落ちてくる白いひげの男が現れて言う。
「おかしいと思わないかね!!」
「なに、今度は誰? もうなんていうか、驚かないと思うけど」
「カタリがすごく慣れてる……私はまだ慣れませんよ……」
逆さまの男は言う。
「扱うテーマが使い古されたものだと斬新さは無いが、扱うテーマが未開拓だとだれも見向きもしない!」
「そりゃまあ……」
「未開拓テーマでは、そもそも人が来ませんから」
逆さまの男は続ける。
「長ったらしいラノベ風タイトルを付けると売れないというから短めのタイトルにしてみたけどそもそもやっぱり僕の小説は読まれない件について!!」
「せ、宣伝不足、とか?」
「中身が面白ければ読んでもらえるのでは?」
逆さまの男がバーグさんを見る。
「さては!」
「な、なんですか?」
!
|
ぁ
様
貴
、
な
だ
鬼
↑
逆さま男はそのまま落ちて行った。いや、上がって行った。どこかへ。
カタリが言う。
「思うけど、この世界だと、バーグさん、結構バッサリ行くよね」
「え? ええ? あ、え? だ、ダメでした!?」
良いんじゃないかな。
「さて、最後ですね。ここに九十九が居るはずです」
真っ白な空間はまだ続いている。
だが、そこにドアがある。ドアノブではない。木目の、少し年季が入ったドアだ。
「そういえば……カタリさんとバーグさんは偉いですね」
「何が?」
「え? 私、今回精神的に刺してばっかりでしたが……」
落ち込んでいるバーグさんを脇目に、コンプレックスは言う。
「いえ、大抵、九十九の頭の中に入って来た者は……私のような案内人の案内を無視してどこかへ行ってしまいます。そして、帰ってこないんですよ」
「帰ってこない? 帰る場面を見てないだけじゃなく? 僕らは帰れるでしょ?」
「そもそも、来ること自体不思議なものだと、私も思います」
ドアを開きながら、コンプレックスは言う。
「いいえ、あなた方が狂気に呑まれないことを望みます。この世には、様々な作品がありますから……知らない方が良い世界も多いんですよ」
ドアの向こうは少し汚れた、生活感あふれる部屋だ。
カタリは少しむっとして言う。
「どんな形であれ、作品は作品でしょう? 物語は物語だ。そこに物語があるなら、僕は視たい」
腕を組み、鼻息荒く言う。
「読めばわかるさ! 読まないと、わからない!」
バーグさんもまた、そっとカタリの隣に立って言う。
「私もカタリと同意見です。ここは、書いて、読んで、伝えられる場所です。そのための場所です」
そして、笑みをこぼして続ける。
「それをお手伝いするAIが私です」
コンプレックスは二人を視て頬を緩める。
「ああ、やっぱり、いざ実際に書いてみると、何となくではありますが……つかめる物ですね、キャラクター像というのが」
その一言を残して、コンプレックスは消えた。
残された二人は、散らかった部屋へと入って行く。
そこには、男が、高校生ぐらいの青年が一人いた。
その青年は、二人を見て言う。 そ
こ
「すみません、ここ、どこです?」 に
九
バーグさんが疑問に疑問を被せる。 十
九
「あれ? もしや、九十九さんではない? え、誰?」 は
居
青年は言う。 ま
せ
「お、俺は……茶島です。茶島、シュンです」 ん
「いや本当に、誰?」 よ
。
カタリは、視た。そして、とてもゲンナリした表情をしながら言った。
「これ、宣伝だ……」
「宣伝?」
そう言って拾い上げた紙にこう書かれていた。
「こんな作者、
『いずれ彼方へ至る
良ければ、読んでね★
追伸
その青年は、次回作の
「……つまり?」
「ダシに使われたんですよ! 太いなこの作者!!」
『九十九 千尋』を訪ねるって正気かい? 九十九 千尋 @tsukuhi
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