エピローグ/プロローグ
…
「ビーストに巣を、なぁ…。ぶっ壊されたりしねぇか…?」
「だが、それで上手くいくなら試す価値は十分あるな。怪我を承知で戦うより、よっぽど良い」
腕を組んで首を捻るロードランナーの横で、プロングホーンが真剣な面持ちで呟く。
「プロングホーン様がそう仰るなら試すべきだと思いますぅ!」
「おい」
短くツッコむチーターに苦笑しながら、キュルルはフレンズ達一人一人の顔を見つめた。
「これは、フレンズのみんなの力がないとできない作戦なんだ。場所を考えてくれるフレンズ、巣をつくる材料を集めてくれるフレンズ、作る作業をしてくれるフレンズ、危険が近付いてないか確認してくれるフレンズ、もしもの時対処してくれるフレンズ……たくさんの役割が必要だから」
「私達の、力が…」
一人一人が頼りにされるという喜びに、フレンズ達の顔に明るさが増えていく。
「無計画でやるより、ここでちゃんと計画を立てて――【おうち】の設計図をつくろう。まずは、あのアムールトラのビーストから。みんなが教えてくれる情報を頼りに、ぼくがスケッチブックに描いてみるよ。それをもとに作るのは、どうかな?」
「すっごーい!とってもいい作戦だね!」
「アンタらしくていいんじゃないの?あたしは乗ったわよ」
サーバルとカラカルを皮切りに、皆口々に賛同の声をあげる。
反対するものなど、もう誰もいなかった。
「巣の場所決めならお任せください!条件に合った良い物件をご紹介できますよ」
「遊び場を直したときみたいな感じで良いなら…私、巣作りのお手伝いができる、かな…」
「オレはピット器官があるし、ウチの支配人は地獄耳持ちだから、監視役にはもってこいだぜ」
「地獄耳ってどういうことかしら…?」
「おーい、誰かトラの仲間のフレンズはいないかー?どんな形の巣がいいか教えてくれー」
わいわいガヤガヤと、賑わいだしたホテル内。
各々が、自分の得意なことをどう活かせるか相談し合って考えている。
啀み合うことなく、力を合わせようと前向きに努力する姿が、そこにはあった。
「キュルル、良い作戦を思いつきましたね」
「博士…」
皆の様子を見守っていたキュルルの横へ、博士がやってくる。
「これが上手くいけば、ビーストが他の子達の縄張りを荒らすことは少なくなるでしょうし――落ち着いて過ごす場所を得られれば、自分の在り方を見つめることが、彼女達にもできるのかもしれませんね」
「うん…そうなったら、次の段階に進むこともできるかもしれない」
しかし、と腕を組む博士。
「逆に、そう上手くはいかないかもしれないのです。ビーストの襲撃を免れながら、少しずつ巣作りをして…その結果ロードランナーの言ったとおり、壊されて終わるかもしれないのです。巣を作ったところで、行動に変化が見られない可能性もあるのです」
様々な可能性を見据えた、博士の冷静な発言を受け止めて、キュルルはそれでも笑顔を作った。
「そうかもね…。でも、たとえそうだったとしても、今のみんななら力を合わせて、いろんな方法を試してみることができると思う。一回の失敗程度で、諦めたりしないよ、みんな」
博士とキュルルのやりとりを、少し離れた所から見守りながら、助手はかばんを想う。
(かばん、安心するのです…。お前が頼った相手は、しっかり頑張ってくれているのです…。だからお前も――)
手に残る彼女の身体の感触を確かめるように、助手は両手を見つめ、握りしめた。
「キュルルー!早くこっち来て手伝って!みんないろいろ教えてくれるのはいいけど、主張が激しくてまとまんないわ!」
「キュルルちゃん!その【せっけいず】?っていうの、描いてみて!」
サーバルとカラカルが呼んでいる。
キュルルはホテルの窓から、夜の闇に包まれた外を見つめ、スケッチブックを握りしめた。
(きっと君も、不安なんだよね。…待ってて。ぼくたちが作ってみせるから。君の居場所を。縄張りを。――安心して過ごせる、君の巣【おうち】を…!!)
――――【キミノス】 おわり
【けもフレ2IF展開】キミノス 大上 @k-mono_o-kami
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます