第4話 沙羅


「さっさといくよ」

「ま、まって」


私の言葉を待たずに行こうとするが、体の弱いこいつが走るとすぐ息を切らし辛そうにする。正直めんどいので家の門を出てすぐで待つ


「沙羅ちゃん待ってよ」

「なに?待ってるじゃん、早くしてよ」


待ってるつうの!!早く行きたいんだよ!!


「早く行って早く帰る」

「う、うん」


死んでしまった両親を病院に確認に行くんだろう、なんでそんな気が滅入ることをして、なんかいろんな手続きがあるんだと思うけれど、私はまだしも、こいつには少し荷が重いのではないか。


まぁ、おおきなお世話だろうからなにも言わないけど。


「ねぇ、学校楽しいの?」

「え?」

「だから、学校は楽しいのって?」


いきなり、私に声をかけられてビックリしてるんだろう、この数年私からから声をかけることなんかなかったと思う。


「学校は楽しいよ、檸檬もいるし、お花の世話楽しいし」

「ふーん、そうなんだ」

「沙羅ちゃんは楽しい?学校?」

「まぁ、普通かな?特に変わらない」

「勉強はどう?」

「…普通」

「本当に?」

「うるさいな、勉強できないの知ってるでしょ」


天然なのか、ただ私を馬鹿にしているのか、もうそんなのにはムカつく気もない。


「…」

「…」


私の一言のせいで無言になってしまう。別に喋ることないから無言の時間は耐えられないわけではない。


でも


この女は無言が苦手なのではなくて、私といる時間が苦手。

だからこの時間も苦手だからこそ喋ろうとする。でも喋る話題がないから私の一歩後ろでオロオロしてるだけ。


はぁ、病院着くまでは喋ってやるか。


「ねぇ?」

「う、うん」

「さっき言ってた、れもん?って子は友達なの?」

「うん、中学からずっと一緒なんだ」


そんな子いたっけ?中学は私も同じ学校だったと思うけど。


「男?」

「ち、ちがうよ!女の子だよ!」

「ふーん、つまんねぇの」

「つまんないって」


そういえばこの女が男と一緒に見たことがない気がする。いじわるでもしてやろうかな


「彼氏いないの?」

「い、いないよ!できたこともないし」


どんどん声が小さくなっていく。


「彼氏欲しくないの?」

「いらないよ!それに私なんかと」

「そういうのはあんまり関係ないんじゃない?」

「えっ?」


聞き返された時に気づいた。私は友達と話すようにこの女と喋っている。いつのまにかこんなに喋っている。昨日までは全然喋ることなんかなかったのに。


私は立ち止まって、後ろを振り向く。


「どうしたの?」


いつのまにか笑顔になっているこいつに聞く


「なんで笑ってるの?」


別に母さんが死んだことを忘れたとかそういうのを聞きたいんじゃなく、ただ疑問に思った。なぜ今笑顔になっているのか。


「久しぶりに沙羅ちゃんと喋るの楽しかったからかな?」

「…何で私が質問してるのに、疑問形で返されてるの?」

「ご、ごめんね!」


そう言い謝りながらも、笑顔になっている。


なんだろう私がすごく恥ずかしくなってきた。

なんで私も一緒に喋ってるのに私は笑顔になっていないのか?

こいつみたいに普通に笑ってないのか?

友達のように話してたなら笑うんじゃないの?


「沙羅ちゃん?もうそろそろ病院につくよ?」

「…うん」


そんなことを考えていたら、気づいたら病院の門の近くまで来ていた。

随分大きな病院に運ばれたんだなぁ


どうも叔母さんが言うようないいニュースがあるようには思えないんだけど。どういうことなんだろう?


私達はそのまま受付に向かう。




—————

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