姉妹だからって仲良いわけじゃない
マドロック
第1話 沙羅
「つまんなーい」
「しらないよ」
私の目の前にいる、茶髪の女の子はテーブルにグデーンと腕を伸ばし胸をテーブルに突っ伏している。
「いいよねー、
「あぁ、もう別れたよあんなクズ男」
「えっ?!嘘!?いつ別れたの?!」
机に突っ伏しながら、こちらを向きブーブー口を尖らせながら愚痴みたいなものを吐くが、私がある事実を喋ると、急に体を起こしてこちらにグイグイ聞いてくる。
「一昨日に振った」
「え?そうだったの?言ってよー!」
「別に言う必要なくない?」
「あるよ、ベストフレンドじゃん!それとそれとなんで別れたの?」
こいつ、いくら自称ベストフレンドだからってグイグイ聞いて聞きすぎじゃない?容赦ないなこの子
「ね?ね?なんで別れたの?」
「あ、それは相手の目的が体だったから」
「からだ?」
「うん、だから」
なんでここまで言ったのにわからないのかがわからないけど、私はテーブルに手をつき、
「エッチ目的だったてこと」
「エッチ?!」
「美咲にはちょっと早かった?」
美咲は耳まで真っ赤にして、驚いたようにする。
「そ、そうなんだね、なんか嫌なこと聞いちゃったかな?」
「別に、何だかんだで結局ヤってないしね」
「やってない?」
「だからぁ、エッチ」
「?!」
またまた美咲は顔を真っ赤にして今度は縮こまる。この子は小動物みたいな子だね。
「見てあれ、
「金髪に染めちゃって、もう1人の方は赤髪にメッシュだよ」
「頭の悪い学校は頭の色も悪いのね」
「ちょっと聞こえちゃうよ」
聞こえてるっつーの。
「そんなに縮こまらなくてもいいよ、美咲」
「で、でも」
「言いたい奴には言わせとけばいいじゃん」
「そ、そうだね」
そう言い、美咲は苦笑気味に笑い表情を固まらせる。
私と美咲が通っている高校は、県内では不良の妖精学校と呼ばれている高校なので、他の高校からはすごくバカにされるのである。高校生が悪さをすればすぐに「那波野高校の生徒だろ」と決めつけられる。まぁそんな馬鹿な高校にしか進学できなかった私達が悪いのだけれど、馬鹿にされるとやはり腹がたつ。
そして、今私達を馬鹿にした高校は県内で一番偏差値が高い
やっぱり頭のいい人達からしたら頭の悪い奴らを見るのはさぞかし気持ちいいのだろう。私はその立場になったことがないからわからないけど。
「もう出よっか?」
「う、うん、ごめんね」
「いいよ、私ももう飲み終わってるし」
正直、あんな奴らの視線を浴び続けるのも嫌だし、美咲が嫌な顔してるのも見るのも嫌だし、何より私は駛馬高校の奴らが嫌いだし。
「今日は私が払うよ」
「え?でも美咲今月ピンチだって」
「これくらい払わせて、沙羅ちゃんと一緒にいるのが楽しくてそれに、沙羅ちゃんにはやっぱり恩があるから!」
「そ、そう?」
私は美咲の圧に押される。まぁそこまで言ってくれるなら今回だけ美咲に奢ってもらおうかなぁ
「見て見て、あの赤髪が金髪に奢らせてるよ」
「ヤダヤダあんなん、脅しじゃん」
「あの金髪ちゃんかわいそうに」
もう私はキレそうだった。いやもうキレていた。あの駛馬高校の奴らに殴りかかろうとあいつらに近づいた時。
「沙羅ちゃん?もうお会計終わったよ?」
「ッ!」
「沙羅ちゃん?」
「…いやなんでもないよ、帰ろっか」
ありがとうございました。
私と美咲は店員の声を後ろに、喫茶店を出て歩きで帰路につく。私と美咲の家はそんなに近くもないが遠くもない微妙な位置にあるがゆえに途中まで一緒に帰る。
「沙羅ちゃんダメだよ、もう人を蹴ろうとしちゃ」
「なんでわかったの?あいつらが気に入らなかったからしょうがなくない?」
「それでも!もうそんな沙羅ちゃんを見たくないよ」
「わかったよ」
「ほんと?」
「美咲の前ではね」
「意味ないじゃん」
美咲はジト目で私を見つめている。ほんとに小動物みたいで可愛い。表情もコロコロ変わるし
「じゃあここで、明日もちゃんと来てね」
「うん、気が向いたらね」
「迎えに行くよ」
「ちゃんと行くから、それは勘弁して」
美咲は本当にやりかねない。
美咲はこちらを向き手を振りながら、足を進める。お願いだから前を見て。あ、ほら電柱にぶつかってるじゃん。言わんこっちゃない
さて私も嫌で嫌で仕方ない家に帰るとするか。
とぼとぼと私の家に向かう。私の家というか親の家なんだけどね。
私は学校と家どっちがリラックスできるかと言ったら、俄然学校です。美咲とか気の合う友達がいるしね。
そんな考え事をしていると、家に着いた。
玄関の門を開けて、横に綺麗にがーでにんぐされている庭を横目で見て、ドアを開ける。
「ただいま」
………
返事はなし、まぁわかってたことなんだけどね。
私はリビングに行かずにそのまま二階の部屋に、荷物を下ろす。
タンスからタオルを出して、シャワーを浴びに行こうとしてすると、リビングのドアが開いた。
「おかえり」
優しく微笑むように言ってくる。
「ただいま」
ぶっきらぼうに返す。
「シャワー浴びるの?」
優しく聞いてくる。
「うん、それじゃ」
私は、足早にお風呂場に向かう。
「あ、ちょっと待って」
「…何?早くシャワー浴びたいんだけど」
「今日お父さん達、帰ってこないって」
「そう、どうでもいいよ」
私はそう吐き捨てて、その場を去った。
本当に嫌いだ。今話した姉も父も母もどいつもこいつもムカつく。私とは違って頭が良く勉強を頑張っていい高校に入ったからって頭の悪い私を見下して。
だから嫌なんだ駛馬高校に通っているやつは。
私が姉の高校より偏差値がすごく低い高校に行くとなると、急に態度が変わって私に厳しくなり、姉には甘くなる。
クソッ!へんなことを考えてたからシャワーが全然気持ちよくない。
何回この髪の毛も黒染めしろと言われたか、私が反抗したらしたで、すぐ黙るくせに。
どうせ、親が帰ってこないから私が晩御飯を用意しなくちゃいけない。
姉も手伝おうとするけど、そんなに仲良くないし、無理に仲良くしようとしなくていい。そしてそんな風に反抗しても、これっぽっちも怒らない姉がまたムカつく。
本当にムカつく事ばっかりだ。
プルルルルルル!
「ん?」
電話の音がする。
「はい、鏑木かぶらきです」
遠くで、姉が出ている声が聞こえる。なら私が行く必要はないので、ゆっくりと髪をドライヤーで乾かす。ドライヤーの音は結構好き。
ドライヤーのゴォオオォォ!の音で周りの音が聞こえなくなるから、それにドライヤーの最中は髪を乾かすのに集中できるから。
もうそろそろ乾いたね。
ドライヤーのスイッチを切り、晩御飯を作ろうとリビングに向かう。声が聞こえないから電話は終わったみたい、私はリビングのドアを開ける。
「何してんの?」
リビングのドアを開けると、私の目には床に座り込んでいる。姉の姿があった。
「いや、だから何を」
「うっ、ぐす、沙羅ちゃんっ!」
「はっ?なんで泣いてんの?」
床に座り込んでいると思ったら今度はまぁまぁの量の涙を流している。
「いや、ちょっと」
私はこういう時どうすればいいかわからない。姉のこんな姿を見るのは初めてじゃないけど、体が動かなかった。
「うっ、お父さんと、おかぁさんが!」
「あの2人がどうかしたの?」
「事故で死んじゃったてぇ!」
今の一言で余計に涙を流す姉。自分で言って自分を追い込むなよ。
「ぐすっ、沙羅ちゃん!どうしよう!」
本当にムカつく、親が死んで心底悲しむことのできる姉が、そして親が死んだのにこれっぽっちも心になんにもきていない自分が!
本当にこの世はムカつく事ばっかりだ。
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