第5話 純恋
「あ、こっちこっち」
受付に聞こうとすると、横の待合室から声が聞こえ、そちらの方を向くと向こう側から歩いてきた。
「いやー、久しぶり二人ともおっきくなったなぇー」
きっと叔母さんなのだろう。黒髪の短髪で背が高い。Tシャツにジーンズとかなりラフな格好。
なんで笑顔なんだろう。少し不謹慎な気もする。
「ああ、ごめんね。ちょっといいニュース聞いたから元気出たけど二人はそんなテンションじゃないよね?」
私の表情に気づいたのだろうか?顔に出てたのかな?
「叔母さん、いいニュースっというのは?」
私はそれが気が気でない。さっきから不幸なことばかりだからいいニュースを早く聞きたくなっている。
「は?何いいニュースって?」
沙羅ちゃんが、不思議そうに私をみながら聞いてくる。あれ?私言ってなかったっけ?
「あれ?純恋ちゃんから聞いてないの?」
叔母さんはそんなことないでしょ、というように沙羅ちゃんに聞いた後に私の方を見る。
「ご、ごめん、言ってなかったっかもしれない」
私は自分で言葉を発しながら語尾に向かうほどに声が小さくなっていっていることに気づいたが、沙羅ちゃんに少し怒られそうなので、下を向いた。
「全然、聞いてないんだけど」
沙羅ちゃんは呆れたようにため息をつきながら言う。
「まぁいいじゃないの、いいニュースはね」
私は叔母さんが発する前に下を向いていた顔を上に挙げる。そして目だけを動かして横を見る。
綺麗な沙羅ちゃんの顔が見えるが、どこか不安そうに見える。たとえ沙羅ちゃんでも少し怖いのかもしれない。
「実は!
私と沙羅ちゃんはあっけに取られた。状況がまた読み込めなくなってきている。すると沙羅ちゃんが
「ちょ、ちょっとまってよ!母さんは死んだって!」
沙羅ちゃんが珍しく大きな声を出している、近くにいる人は少しチラチラみているがそんなことは関係ない。私はもそれがとても気になっている。
「いやいや、死んでないよ!息も絶え絶えだったけど」
「ほんとに?どういうこと、ねぇ純恋?死んだって言わなかった?」
「え?うん。私も電話を聞いた時に確かにそう聞いたような」
「トラックの運転手の人も慌てたんでしょ?自分が原因だし?」
私が慌てたから、勘違いしちゃったのかもしれない。動揺してたけど、沙羅ちゃんに嘘言ったのは悪いよ。
「ごめん、沙羅ちゃん」
「別にいいよ、生きてんなら。親父は?」
私が聞こうとしなかった言葉を沙羅ちゃんは平気で聞く。聞かなければならないからこそ聞くのだが勇気が単純にすごいと思えた。
「
「そうですか…」
さすがに沙羅ちゃんもショックを受けているのだと思う。たとえ仲良くなくても家族だもんね。
叔母さんは私達二人の顔を見た後、悲しそうな表情をしたまま
「じゃあ彰くんの本人確認する必要があるけど、どうする私だけでもいいけど、二人は?」
きっと叔母さんはこの言葉を言うか言わまいか待合室で何度も考えたのだろう。叔母さん自身も眉が少し下がっている。
「私は見るよ、親父の顔。」
沙羅ちゃんに凛として言う。その顔は覚悟決めたような顔。これから会う悲劇に。やっぱり強い。心が強い。
「私も見ます。お父さん」
私はどんな顔をしているのだろう。きっと泣きそうな顔しているんだろう。今にも泣きそう。きっと耐えられない。そんなことはわかってる。でもこれが最後だから。
「二人とも強いね、じゃあ行こうか」
その後のことはそこまで覚えていない。
3人で本当に死んでいるのかという顔のお父さんを見た。私は泣きじゃくっていた。もう話せないなんて信じられなかった。今にも起きそうなのに。叔母さんはどうだったんだろう。沙羅ちゃんはどうだったんだろう。二人の表情は見えていたのかもしれないが。
私は自分の涙を拭くことに、流すことに精一杯だった。
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