痛風日記

桑原賢五郎丸

2019 0319〜0329

 右ひじ痛風日記



 3.19(火)

 右肘に痛み有り。前触れのない激痛。机の上に右肘を置けないほどだが、日課の腕立て伏せはこなす。

 多分これが悪い。



 3.20(水)

 痛みでなかなか眠れず。動かすと痛いが、動かさないとダメな気がした。

 多分これは悪い。

 動かすとゴリゴリする。水平に伸ばしたのが180度だとすると、160度まで程度しか上がらない。何度も試す。

 これも悪い。

 痛みの度合いで言うと、脱臼に近い。脱臼も骨折もしたことはないので説得力に欠けるが、泣きそうなほど痛いので、そう思うことにする。



 3.21(木・祝)

 さらなる痛み。まんじりともできず。パソコンを触る気が起きない。だからスマホで症状を調べた。指をちょこちょこ動かす。

 多分これも悪い。

 あいにく、休日のため整形外科は診察しておらず、気合で乗り切ることにする。気合だけでは足りないので、風呂で右肘を温めたり、キャベツを切ったりした。

 これも悪い。



 3.22(金)

 9時開院の整形外科に、8時30分に並んだ。先客11人。お前らここはパチンコ屋じゃねえぞと殺気だつが、彼や彼女はおれより重症なのだろう。力の入らない右手を握りしめてこらえる。

 これが悪い。


 開院して30分ほどで診察室へ。

 医者、右肘を見て

「特になんともありませんが、レントゲン撮りましょう」


 診察台でグリグリと動かされツイスト&シャウト。ひねられては悲鳴、またひねって悲鳴。


「はいこっち」

「グワワワ」

「じゃあ逆」

「アバババ」


 これが悪い。


「レントゲンに異常はありません。ということは痛風の可能性が」

「おいマジか」


 思ったままにおいマジか、と声に出したら看護師さんが2人笑った。久しぶりにモテた。嘲笑ともとれる。


 血を抜くから一週間したら来いと帰される。痛み止めの王様ロキソニンをもらう。



 3.28(木)

 一週間経ったので整形外科へ。ロキソニンのせいか、痛みはひいている。ひいているので、タイミングを見計らって腕立てやったり酒を飲んだりしていた。

 これが悪い。


 医者、検査結果を見て

「尿酸値が8です。7を越えたら痛風です」

「ということは手前はシロですか、クロですか」

「クロです」

「Oh My...」


 思ったままにOh My...、と声に出したら今度は看護師さんが3人笑った。一週間ぶりにモテた。だがこれ嘲笑ね。


 今度は別病院の内科へ。整形外科の勧めどおり、尿酸値を下げる薬を処方してもらうために。


 少し待って診察室へ通される。

「ご家族に痛風の方はいます?」

「兄がそうです」

「他にご病気の方は」

「父母ともに糖尿病であります。父は脳梗塞からの半身不随、母はくも膜下出血から生還を果たしております。手前はサラブレッドです」

 医者、笑い出す。失笑というやつだ。



 3.29(金)←イマココ!!

 痛みはないのよ。今8:41。

 今日はプロ野球の開幕戦があるので、酒、飲まないとならん。

 これが悪い。

 尿酸値が上がる。

 広島VS巨人が何より楽しみ。広島ファンとしては今年のストーブリーグのできごとから、なにがなんでも本拠地で巨人に負けたくないのよ。


 しかし、なにが困るって、文章を考えようという集中力が沸かないことだ。いろいろ飲んでいる薬のせいかもしれないけど、痛風に怯えているせいで落ち着かないというか……。

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痛風日記 桑原賢五郎丸 @coffee_oic

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