67.リッカートスケールのスゝメ

 みんな知らないけど、誰もが知っているリッカートスケール!

 リッカートスケール(リッカート尺度)とは、人の心理状態を調べるのを得意とするアンケート方法の1つです。


 百聞は一見に如かず。すなわち、こういう形式のアンケートを指します。



例1.このコラムの内容は満足できましたか?


1:とても満足できた

2:やや満足できた

3:どちらともいえない

4:やや不満

5:とても不満だ



例2:いい仕事先があれば転職してみたい


1:とても当てはまる

2:やや当てはまる

3:どちらともいえない

4:あまり当てはまらない

5:まったく当てはまらない



 リッカートスケールのメリットは「どれだけ満足できたか」というような数値で表しづらいことを数値化できることです。

 『例1.このコラムの内容は満足できましたか?』であれば、

 【1:とても満足できた】を5点

 【2:やや満足できた】を4点

 【3:どちらともいえない】を3点

 【4:やや不満】を2点

 【5:とても不満だ】を1点

 とし、回答の平均点(1.0~5.0の間になるはず)をとれば、コラムの満足度を疑似的にスコア化ができます。


 仮に、現在公開しているコラム57本の末尾でこの質問をし、集計すれば「どのコラムが好評だったか」がわかる。スコアが高かったコラムの共通点や傾向を探れば、より閲覧者の興味を引ける記事を作る一助にもなるでしょう。


 あるいは、とあるゲームの購入者に、


例3:このゲームの続編が出るとしたら購入しますか?


1:必ず購入する

2:たぶん購入する

3:どちらともいえない

4:たぶん購入しない

5:絶対に購入しない


 というリッカートスケールの質問をします。結果の比率が、


【1:必ず購入する】22%

【2:たぶん購入する】27%

【3:どちらともいえない】10%

【4:たぶん購入しない】16%

【5:絶対に購入しない】25%


 だったとすれば、【1:必ず購入する】【2:たぶん購入する】の合計の22+27=49%が次回作も購入する見込みだと仮定できる。今回が5万本売れたとすれば、2万5千本弱が該当します。

 次回作の販売目標本数が8万本とすれば、そこから2万5千本を引いた、5万5千本を売るための策を講じれば目標が達成できるはず……。と、予想が立てられます。


 もっとも、わざわざこの手の面倒なアンケートに答えてくれる人はコンテンツに対して、何らかの感情――おそらくは好意的なお客様でしょう。その分、甘めの採点でアンケートを答えてくれている可能性があるわけですが。

 それでも、【続編を出せばどれだけ売れるのか?】となかなか判断が難しい、数値予測の材料となりえます。


 あるいは、真ん中にある選択肢【3:どちらともいえない】がたった10%しかないことから、今作は好き嫌いの評価が真っ二つに別れたコンテンツであったことも分析できると思います。


 このようにリッカートスケールとは、感情面を数値化できる便利なコンテンツですが注意点――より効果的に使うのに必要な心掛けが2つあります。


 まず、用意する選択肢は、肯定的なものと否定的なものを同数そろえること。

 悪い例として、


例4:このゲームは面白かったですか?


1:とても面白かった

2:面白かった

3:少し面白かった

4:どちらともいえない

5:つまらなかった


 こちらですが、肯定的な選択肢が

 【1:とても面白かった】【2:面白かった】【3:少し面白かった】

 の3つ。


 対して否定的な選択肢が

 【5:つまらなかった】

 の1つとなっていて、選択肢のバランスがとれていません。

 これだと、必要以上に肯定的な選択肢に票が入ってしまい、適切なデータが取れないといわれています。


 もう1点、リッカートスケールは同じアンケートを続けることで、分析の精度が増すことも無視できません。


 仮に、ゲーム【ペケットクリーチャー】の購入者に【このゲームは面白かったですか?】という質問をし、獲得した回答者の平均スコアが3.5点だったとします。

 これだけの数値だけではこのゲームは面白かったのか? と問われると判断は難しいでしょう。


 これまでの例と同じく回答者がつけられる得点は1.0点~5.0点までだった場合、一応、取りうる数値の中央である3.0は超えています。

 でも先述の通り、アンケートにわざわざ答えてくれる人は、それだけの手間暇をかけてくれるほどの好意を持っている人でしょうから、採点が甘くなりがちです。そのうえで、3.5点は高いのか、低いのか……?

 そこで必要なのが比較対象です。


 例えば【ペケットクリーチャー】【ペケットクリーチャー2022】【ペケットクリーチャー2023】【ペケットクリーチャー2024】という関連作があり、どの購入者にも同じ質問をします。

 それぞれのスコアが、


 【ペケットクリーチャー】3.5点

 【ペケットクリーチャー2022】3.7点

 【ペケットクリーチャー2023】4.1点

 【ペケットクリーチャー2024】3.0点


 だったとすればどうでしょう。

 最新作の【ペケットクリーチャー2024】3.0点よりは、【ペケットクリーチャー】3.5点の方が満足してもらえていると考えられる。

 でも、残る【ペケットクリーチャー2022】3.7点、【ペケットクリーチャー2022】4.1点よりは低い。シリーズ全体としては満足度がさほど高くなかったことがわかります。


 このようにリッカートスケールで導いたスコア(平均点)は、同じ質問を続けて比較対象することで、より具体的な評価ができるようになるようです。

 また、これは私の経験則なのですが、この手のアンケートの数値の差は微妙なことが多い。


 このゲームのCGを10点満点で評価してくださいと質問をすると、

 ・CGが普通のクオリティのゲームのスコアは7点台

 ・ハイクオリティのゲームのスコアは8点台。

 と、確かにスコアに違いは出てくるものの、比較しないとわからないような程度に終わることもあります。


 この手の感情の数値化は、質問し続け比較することで分析の精度が上がる――ここは忘れずにおきたい2つ目のポイントでしょう。


■ 今日のまとめ ■

・リッカートスケールは満足などの数値にしづらい感情を数値化するのに役立つよ。

・正しく数値化するには、肯定的な選択肢と否定的な選択肢を、同じ数にする必要があるよ。

・毎回、同じ質問をして結果を比較できるようになると、分析の精度が上がるよ。

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